Ayase、人気楽曲セルフカバーがバイラルチャート好調 聴き手の心揺さぶる巧みなストーリーテリング

 さらに、切なげなAyaseのボーカルと耽美的なメロディが生み出すメロウな印象は、歌詞によってさらに補強されており、2019年に初めて発表された「夜撫でるメノウ」の作詞から、すでに「夜」にまつわるYOASOBIのパブリックイメージの萌芽も見えてくる。

 〈終電はもうないよ/これからどうしようかなんて〉という歌い出しから聴き手を深夜の景色に誘い、〈いつもと同じペースで歩く/街に二人の影映す〉と続くラインでは写実的な情景を描写することで、冒頭から早くもリスナーは完全にAyaseの物語の世界に浸り込んでしまうのだ。〈あの頃は子供だったねと/割り切るには/傷付きすぎたよね〉と過去を振り返り出す頃には、リスナーは楽曲の登場人物と同じ景色を見ているような自己投影感を得る。そして物語は、サビで繰り返される〈君に届けとこの愛を/言葉にのせる毎日を〉の部分に感情のピークが訪れるよう、見事に設計されているのだ。歌い出しの掴み、物語の展開による自己投影、最終的にサビでカタルシスに導く作詞の手腕はまるで小説家のようなストーリーテリングである。

 コンポーザーとしてだけでなくボーカリストや作詞家としてのAyaseのマルチな才能は、閉塞感が漂う日本の音楽界の「夜明け」を担うはずだ。Ayaseがこれから見せてくれる物語から目が離せない。

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