あたらよ、スマッシュヒットの理由は“エモV”にある? Z世代を魅了するセンチメンタルなプロダクト
2021年、旧来の宣伝プロモーションが効きづらい時代となった。しかし成功への道は変わらない。作品力と時代性のバランスがポイントで、楽曲をリスナーに届ける方法論は明確だ。
音楽をスマホで享受する時代、MVが解き放つ映像喚起力の大切さ。エモーショナルな気持ちに火をつける要素があればあるほど記憶に刺さりやすい。結果、伝達や二次創作を誘発することとなり、TikTokなどユーザーが拡散してくれるUGC(ユーザー生成コンテンツ)、ストリーミングサービスのプレイリストやチャートにおけるフックアップ、YouTubeでのコメントやSNSによる口コミでの拡散へと帰結する。しかし、言葉で言うだけなら簡単だ。そうやすやすと事が運ばないのが大変なところ。
そこにきて、“悲しみをたべて育つバンド”、あたらよのヒットである。
専門学校で出会い結成した東京を中心に活動する4ピースバンド、あたらよ。バンド名の“あたらよ”は、明けるのが惜しいほど美しい夜という意味を持つ“可惜夜(あたらよ)”に由来する。なんともセンチメンタルなセンスだ。
校内オーディションへ向けて大切に育て上げたという初のオリジナル曲「10月無口な君を忘れる」を昨年11月28日にYouTube上でMVを公開。瞬く間に再生回数が伸び、1カ月後には100万再生を突破。現在では2300万再生を超えている。
メンバーは、シンガーソングライターとして活動していたひとみ(Vo/Gt)を、その楽曲力に惚れ込んだまーしー(Gt)、たなぱい(Dr)がバンドに誘い結成。その後、アレンジ力に定評あるたけお(Ba)が参加して現在の4人編成へ。
せつなくも狂おしい心を鷲掴みにされるボーカリゼーション、情動や風景を可視化する演奏力、そして歌詞の世界観に気持ちをギュッと掴まれた10〜20代のリスナーが増え続け、今年3月に配信リリースをすると次世代ヒットの指標であるTikTok人気急上昇チャート1位、LINE MUSICリアルタイムランキング1位、Spotifyバイラルチャート1位を獲得。
4月には、2ndシングル「晴るる」、6月には3rdシングル「8.8」をリリース。現在では、世代を超えてリスナーの心を揺さぶり、どちらも再生回数が100万回を突破している。