国境やジャンルを越えた“推しの掛け持ち”が増加する背景 日韓ボーイズグループの共通点、互いへの影響から考える
7月に各テレビ局で放送された夏の音楽特番は、沢山の視聴者を楽しませた。今年はこれまでの音楽特番とは異なり、日本のアーティストにとどまらず、海外アーティストの出演も多かった。まさに昨今のエンタメのグローバル化を象徴するかのような出演者のラインナップであったが、その幅広さに物珍しさを感じた視聴者は意外にも少なかったように思う。アーティストの活動領域だけでなく、“推しの掛け持ち”においても国境やジャンルを越えることが徐々に増えているように感じるからだ。各音楽特番での出演機会が増加したK-POPボーイズグループは、いずれもBTSが所属するHYBE所属のアーティストであった。これはHYBE JAPANの設立やLDHオーディション「iCON Z ~Dreams For Children~」でのCDL entertainmentとHYBE LABELS JAPANのタッグなどの動きもあるように、HYBEが日本進出に前向きになっていることが背景にあるためだろう。
日韓のダンスボーカルグループの違いの代表的なものとしては、パフォーマンスに求められるものがあった。日本発のグループはこの前まで一般人だったという人材がいきなり舞台に立つことも多く、その過程でメンバー自身の成長を見守ることも楽しみの一つだった。一方で、韓国発のグループはパフォーマンスに対して完璧さを求める傾向にあり、全メンバーのダンスがシンクロするのはもちろん、そこに至るまでの練習生期間も厳しいレッスンがあることは周知されている。しかし、その違いも段々と変化してきた。例えば、韓国のアイドル練習生がデビューをかけて出演するオーディション番組ブームが印象的だ。オーディション番組では、練習生自身がセルフプロデュースによるキャラクターの確立を試みたり、歌やダンスが不得意な練習生もフォーカスされることが多くあった。日本のボーイズグループも、今や世界での活躍を目指して活動するグループがほとんどだろう。デビューに至るまでの下積みとして、ハードなレッスンやライブを重ねるグループも少なくない。グローバルシーンを意識している楽曲を制作したり、SNSの活用方法にも工夫を凝らすなど、日本のエンタメ業界全体が底上げされたようにも感じる。
日韓のボーイズグループには共通点もある。それは、人気になる要因として、キャラクターやパフォーマンス、ビジュアルの見せ方といったメンバー自身の魅力が関係していることだ。もちろん、スタイリングやメンバーの振る舞い方に違いはあるが、それぞれの個性が重視される点は万国共通である。「2021年上半期のティーンが選ぶトレンドランキング」の<ヒト部門>で「なにわ男子」などジャニーズ勢と「チャ・ウヌ(ASTRO)」といったK-POP勢がランクインしているのは、まさに様々な個性の総合点であると言える(※1)。