『ウル盤』インタビュー
ウルフルズ、30曲セルフカバーで実感した“いま演奏する意味” 伊藤銀次との出会いなどキャリア転換期も振り返る
久々のライブでジョンBが見舞われた“ハプニング”
ーー「39(サンキュー)」が収録された『YOU』は2006年なので、ブレイクから10年経った時期の楽曲ですね。
トータス:まさにそうで、『YOU』は“10年後の『バンザイ』”がコンセプトだったんです。
サンコン:特に「39(サンキュー)」は『バンザイ』の続編というか。松本くんの個人的な話がそのまま歌になっているところがあって。
トータス:確かに一番個人的な内容かもしれへんね。だからと言って湿った曲にはしたくなくて。リズムはダンサブルやし、メロディがあるようなないような、ちょっとラップみたいな感じもあって。だいぶ変わった曲になったんやけど、そこまで定着しなかったんですよ。歌詞がパーソナルすぎるというか、日記みたいな歌ってこともあるんやろうけど。
サンコン:うん。
トータス:今回「39(サンキュー)」を取り上げたのは『ウル盤』という括りもあるし、「ウルフルズ、こういう音楽もやってるよ」という意思を示すバラエティ豊かなチョイスでもあって。久々に演奏して「おもしろいなあ」と思ったし、主観的な気持ちはとっくに薄れて、客観的に捉えられましたね。他人の曲をやってるような感じというのかな。長いこと演奏してなかったせいもあると思うけど。
ジョンB:“10年後の『バンザイ』”というテーマもそうだし、2006年当時はちょっと気負ったところもあったんですよね。でも今回は楽しく演奏できたし、ちょっとシャレた感じの曲になったかなと。
ーーそして初回盤には今年1月5日に中野サンプラザで行われた『ウルフルズ ライブ 2020-2021 〜Happy New Yeah!! 好きでよかった〜』の映像も収録されるということですけど、久々のワンマンライブ、手応えはどうでした?
トータス:その前、去年の秋に大阪の万博記念公園で『大阪文化芸術フェス presents OSAKA GENKi PARK』に出たときが、(コロナ禍になって以降)最初のライブだったんですけど、久々すぎてジョンBが立ち位置を間違えたんですよ。
サンコン:あはははは!
ジョンB:自分でもビックリしましたね。マイクスタンドに貼ってあるピックを取ったら、いつもより柔らかいから「あれ?」って(笑)。
トータス:サポートギターの桜井くん(桜井秀俊/真心ブラザーズ)が「あれ、そこ俺の立ち位置なんだけど」って顔してて(笑)。僕はイントロが始まったら出ていく段取りだったんですけど、ステージ袖では舞台監督も大ウケして、めっちゃ和んで。
ーー緊張が解けたと(笑)。
トータス:そうやね(笑)。言うても8カ月ぶりくらいだったんですけど、僕もちょっと勘が鈍ってたし、「え、こんなに浮足立つ?」みたいな感じもあって。今年の中野サンプラザではだいぶ戻ってたけど、お客さんが声を出せなかったり、お互いに妙な距離感があって。演奏してるときは解放されるんだけど、曲が終わった後も歓声がなく、ずっと拍手が続くのはいまだに変な感じですね。「この間合い、どうしたらええんやろう?」って。お互いに気を遣ってる感じというか。
ジョンB:始まるときもそうですよね。SEが鳴っても歓声が聞こえなくて、拍手だけで。あれはちょっと寂しいですね。
トータス:うん。中野の直前、年末に大阪で2本ライブをやったんですけど、セットリストがそれぞれ違っていて。通しリハをやってなかったから、いい緊張もありました。
サンコン:中野のセットリストはジョンBが考えたんですけど、山あり谷ありで、「え、この曲の次がこれ? テンポが出しづらいんやけど」みたいなこともあって(笑)。
ジョンB:お客さんの評判は良かったんですけどね(笑)。
トータス:そうそう。僕は真面目やから……いや、みんな真面目なんやけど(笑)、セットリストを考えると、きれいに起承転結を作りすぎるところがあって。中野のときは普段とちょっと違う曲順だったから観てる方は面白かったと思いますよ。こっちもスリルがあったし。まあ、それも経験則があるからできることですけどね。「何があってもライブは成立するやろ」っていう。
ジョンB:うん。中野のライブに関しては、「やれてよかった」というのが一番ですね。年末年始は感染者数も増えてたし、本当にやれるのかなって心配だったので。予定していたライブがなくなると、テンション下がりますからね……。
トータス:そうやな。無観客配信ライブも最初はよかったんだけど、何本かやるうちに余計にお客さんが恋しくてなってしまって。中野のときは楽屋に集合した時点で「集まれてよかった」と思いましたね。
ジョンB:仕方ないとわかってはいても、早く元通りになってほしいというのが本音ですね。
「誰よりもウルフルズが好きっていう自負がある」
ーー30年の間にはいろいろな出来事がありましたが、現時点でウルフルズの活動を続けるモチベーションをどう捉えていますか。
トータス:どうやろう。見ての通り1人いなくなってますからね。今はウルフルズ好きの3人が集まってますね(笑)。
サンコン:そうやね(笑)。
トータス:やってて楽しいんですよ。昨日もレコーディングだったんですけど、いい感じやったし、誰よりもウルフルズが好きっていう自負があります。
ーーメンバーの皆さん自身がバンドのファンでもあると。
トータス:しかも年齢を重ねるごとに愛着が強くなってますからね、不思議と。
サンコン:セルフカバーをやってるから余計にそう思うのかも。原曲を聴き直すと、「俺、こんなことしてたのか」「本当はこうやりたかったんだけど、できへんかったんやな」とか、いろんなことがわかってきて、余計に愛しさが大きくなりますね。
トータス:わかる。「ガッツだぜ!!」にしても、ずっと「できたら歌い直したい」と思ってたんですよ。それって誰でも思うことじゃないですか。映画監督がディレクターズカットを作るのもそういうことやし。
ーー「本当はこうしたかった」という心の残りがある?
トータス:そうそう。でもね、やり直しても「本当はこうしたかった」ということができないんですよ。それくらいオリジナルには代えがたいものがあるし、愛着もあるから。セルフカバーに関してはそのことをわかった上で楽しんでいるんですけど、「俺はもっとやれるはずだ」という理想を追いかけてる部分もありますね。「自分たちはこの程度やな」とは思っていなくて、「もっとすごいはず!」だと思っているという(笑)。側から見たら愚かかもしれないですけど、その気持ちがなくなったらやれないでしょうね。
ジョンB:この年齢でバンドをやってること自体、未知の世界ですからね。これからどうなるかわからないし、だからこそ面白いなと。
トータス:考えてみたら、The Rolling Stones初来日のとき(1990年)のキース・リチャーズの年齢を軽く超えてますから(笑)。まだ40代でしょ、あのとき。
ーーそうですね(笑)。しかもいまだに現役っていう。
ジョンB:そう考えるとすごいな、ストーンズ。セルフカバーをやってもう一つ感じるのは、「演奏のクセがついている」ということで。それは自分の課題でもあるんですけど、クセをできるだけ取り除いて、またフレッシュに演奏する機会にあったらいいなと。
ーーそこは難しいですよね。ファンにとっては演奏のクセが愛しさに結びいていると思うので。
トータス:あー、そうか。
サンコン:“味”にもなってるというかね。
ジョンB:良くも悪くも(笑)。今は楽しく演奏できているし、やっててよかったと思えているので、それが一番ですよね。
■リリース情報
ウルフルズ
セルフカバーアルバム『ウル盤』
2021年8月11日(水)発売
●初回盤(Blu-ray付)¥5,940(税込)
●初回盤(DVD付)¥5,280(税込)
●通常盤¥3,300(税込)
【CD】
01, バンザイ~好きでよかった~ V
02, やぶれかぶれ V
03, それが答えだ! V
04, 泣きたくないのに V
05, かわいいひと V
06, 笑えれば V
07, きみだけを V
08, 39(サンキュー)V
09, 胸の… V
10, 大丈夫 V
【Blu-ray/DVD】
『ウルフルズ ライブ 2020-2021 ~Happy New Yeah!! 好きでよかった~』
2021年1月5日 東京・中野サンプラザホール
バンザイ~好きでよかった~ / それが答えだ! / タタカエブリバディ / センチメンタルフィーバー ~あなたが好きだから~ / 生きてく / ワンダフル・ワールド / きみだけを / 借金大王 / サムライソウル / サンシャインじゃない? / ひとつふたつ / バカサバイバー / 続けるズのテーマ / あついのがすき / ガッツだぜ!! / ええねん / 笑えれば / EN1 ウルフルズ A・A・Pのテーマ
■配信情報
ウルフルズ「よんでコールミー」
配信中 ダウンロードはこちら:https://ulfuls.lnk.to/yondecallme
ウルフルズ「ゾウはネズミ色」
配信中 ダウンロードはこちら:https://ulfuls.lnk.to/zhn
■対バンライブ詳細
『ウルフルズ road to 30th anniversary LIVE 2021「“対バン”よんでコールミー」』
2021年9月25日(土)
開場17:30 / 開演18:30 @福岡サンパレス ホテル&ホール [福岡] w/SUPER BEAVER
入場チケット料金:¥5,800(税込)
※全席指定、未就学児入場不可