『ウルトラマン レジェンド・ソング・コレクション』特別インタビュー
THE ALFEE 高見沢俊彦、ウルトラマンシリーズに魅了され続ける理由 「君だけを守りたい」など歴代楽曲の制作秘話も
「君だけを守りたい」に込めた“ウルトラマンへの想い”
ーーそして今年は『ウルトラマンコスモス』が20周年を迎えていて、『ウルトラマンコスモス COMPLETE SONG COLLECTION』という作品も配信リリースされたんですが、コスモスへの印象はいかがですか。
高見沢:『コスモス』も楽曲が素晴らしいし、青いウルトラマンっていうのが好きなんだよね。コスモスには宇宙っていう意味と、花の優しいイメージがあるじゃないですか。でも、その優しさの裏には強さを強烈に感じるよね。それがウルトラマンコスモスの特徴なんじゃないかと思うし、そんなことを楽曲にも感じました。
ーー『ウルトラマンコスモス』の劇伴は、昭和シリーズでも活躍されていた冬木透さんが担当していますが、冬木さんについてはどう感じていますか。
高見沢:大変優れた才能を持った、心から尊敬する音楽家の方です。番組で一度お会いしたことがあるんですけど、もうちょっとお話したかったな。クラシックの使い方が斬新で、もはやプログレの世界ですからね……。
ーー高見沢さんのプログレ魂にも刺さる部分があると。
高見沢:刺さりますね。クラシックって普通に変拍子だし、普通に転調するじゃないですか。僕も一度オーケストラと一緒にギターを弾いたことがありましたけど、バイオリンのフレーズをギターで弾くことほど難しいことはないよね。ヴィヴァルディの「四季」なんて強烈に速かったから、たまに見返すと「もう弾けないかも」って思います(笑)。
ーー(笑)。高見沢さんの音楽活動でも、ウルトラマンの楽曲から影響を受けた部分ってあるんでしょうか。
高見沢:『ウルトラマン』を見ていると、やっぱり地球を守りたいとか、大事な人を守り抜り抜きたいっていう想いは子供ながらにあったから、そういうイメージは曲に反映されているかもしれないですね。「星空のディスタンス」とか「Battle Starship Neo」とか、空に向かっていくような曲も多く作ってる気がしますし、それはたぶんウルトラマンの影響でしょうね。そういう自分の中にあったウルトラマンへの想いを、あえて意識しながら作ったのが「君だけを守りたい」だったんですよ。
ーー『ウルトラマンダイナ』世代の自分にとっては思い出深い1曲です。確かに〈青空がある限り 風は時を運ぶよ〉〈誰よりも 何よりも 君だけを守りたい〉など、今のお話に通ずる歌詞が印象的ですが、当時どんな想いで制作されたんでしょうか。
高見沢:『ウルトラマンダイナ』のエンディングテーマということで依頼を受けたんですけど、自分の思っている“ウルトラマン像”をそのまま書いていきました。子供たちもたくさん見るわけですけど、子供の時って親がいて、学校があって、ずっと何かに守られている状態じゃないですか。もちろんそれを窮屈に感じる時もありましたけど、大人になって守ってくれていたものがなくなると、今度は自分で守らないといけない立場になる。例えば音楽だと、「このバンドをなんとかしなきゃいけない」「自分たちの音楽性を信じて、ヒット曲を作らなければいけない」とか。それが結果的にバンドを守ることになりますからね。
僕の父親は教師をやっていて、結構お堅い家だったので、『ウルトラマン』を見続けるためには、親のつけ入る隙を与えないくらいの成績を取らないとダメなんですよ(笑)。自分の好きなものを守るためにも勉強はよくしていました。歌詞の〈君〉というのが地球なのか、大切な誰かなのかは聴いた人の判断に任せますが、とにかくサビで〈誰よりも 何よりも 君だけを守りたい〉という強い言葉を印象づけたかったのは確かですね。
ーーなるほど。
高見沢:『ダイナ』は20年以上も前の作品ですけど、守るべきものは一体何なのかって思うと、今の時代にぴったりな歌だよね。だって今は誰も守ってくれない、自分で守らなきゃいけない時代なんだから。
ヘヴィメタルとウルトラマンの親和性
ーーまさにおっしゃる通りだと思います。「君だけを守りたい」は『ダイナ』劇中の重要なシーンで使用されることが多かったですけど、そういったシーンのことは覚えていますか。
高見沢:覚えてます。当時も見ていたし、大事に作った楽曲の1つでしたから、かなり嬉しかったですね。たしか「君だけを守りたい」がセリフになった回もあったよね?
ーーありました(第50話『最終章II 太陽系消滅』)。第26話『移動要塞浮上せず!(後編)』では、「君だけを守りたい」という曲自体が地球を救うきっかけになったりとか、物語が進むにつれてその言葉が『ダイナ』のメインテーマになっていった気がします。
高見沢:そういう話し合いをスタッフとしたことはなかったんですけど、楽曲の意図が制作陣に伝わったのかなって思いました。だからかな、『ダイナ』に対してはかなり強い思い入れがありますね。
ーー高見沢さんは『ウルトラマン列伝』『ウルトラマンギンガ』『ウルトラマンオーブ』など、ここ10年のニュージェネレーション・シリーズにも楽曲提供していますけど、『ダイナ』の頃から時代や作風も変わって、曲作りとしても何か変化したことはありましたか。
高見沢:ストーリーや変身の仕方もだいぶ変わってきて、昭和や平成前半のヒーローの在り方ともちょっと違う感じですよね。オープニング映像もCGが多用されているから、ものすごくスピーディでカッコよくなっていて。切り替えが激しいので、転調などもあえて意識して作りました。まさに『ウルトラセブン』で感じたものをオリジナルで作ったのが、『ゼロ』『ギンガ』『オーブ』の曲たちです。ハードロック的な要素もギンギンに入れましたし、「ULTRA STEEL」なんて完璧にツインリードのメタルサウンドですからね(笑)。
ーー〈鋼鉄〉という歌詞もありますもんね(笑)。メタルやハードロックとウルトラマンというのは、高見沢さんの中で結びついていたものだったんでしょうか。
高見沢:ツーバス(ハードロックやメタルで多用される、バスドラムを2台並べて叩くテンポの激しいリズム)って心臓の高鳴りに聴こえるし、歪んだギターの爆音って強さの象徴なんです。ウルトラマンが戦っているシーンは、メタルテイストなものが合うだろうと思って、そこは意識的に作りましたね。まあ、自由にやりたいように作らせていただきましたから(笑)。「ULTRA STEEL」はマーティ(・フリードマン)と一緒に弾いたんですよ。
ーーライブでも共演されていましたね。
高見沢:はい。あの時のライブはすごかったな。ステージにエレキングが出てきて、ゼロとセブンと戦うんですけど、一生懸命演奏しても、お客さんが全然こっちを見ない(笑)。皆さん怪獣バトルに釘づけでしたからね。