KREVAが語る、気迫のビルボードライブツアーで掴んだ確信 “全力の表現”だからこそ伝えられる非日常

KREVA、気迫のビルボードライブで掴んだ確信

 KREVAが行った1年半ぶりの有観客ライブツアー『KREVA in Billboard Live Tour 2021』。筆者は最終日の7月1日、ビルボードライブ東京でのステージを観たが、素晴らしいパフォーマンスだった。これまで何度も彼のライブを観てきたが、気迫やエネルギーのようなものがここまでダイレクトに伝わってくるステージはなかなかなかった。

 どのアーティストにとってもそうだが、コロナ禍が長引き、動員や客席にも制限がある中、“いつも通り”のライブをやるというのはまだまだ難しい。加えて、オンラインライブはあっても、有観客ライブというのは久々のファンとの“再会”の場になり、特別な意味合いがそこに加わる。そういう場において、どういうパフォーマンスを見せるのか。そういう問いに対しての、KREVAなりの価値観やスタンスが鮮やかに示されていたように感じた。

 1曲目は再びステージに立つことへの気概を綴った新曲「Finally」。全身全霊で歌い、そこから「人生」「One feat. SONOMI」と畳み掛けるように披露していく。MCでも「全力でやっている人間を見せたいと思った」と語っていたが、その言葉通り、終始非常にエモーショナルなステージだった。

 このインタビューは、その数日後に行われたもの。ライブの内容について振り返り、新曲の「変えられるのは未来だけ」について聞く対話だったのだが、話題は徐々に「人は何に感動するのか」という本質的なところに踏み入っていった。(柴那典)

「喉が潰れたとしても、やりきる全力を見せたかった」

ーーライブ、素晴らしかったです。ただ久しぶりの有観客ライブというよりも、ちゃんと意味と意義のある、「目の前に人がいる状態でステージに立つなら何をどう届けるか」に向き合ったパフォーマンスだったし、それがちゃんと届いていた感じがしました。

KREVA:ありがとうございます。

ーーまずはライブを終えて、どうでした?

KREVA:今までいろんなライブをやってきたんですけど、一番燃え尽きた感がありますね。“体力的に”というのが大きいんですけど、とにかく全力を出したかったので、疲れました。

ーー体力的というと、具体的にはどういう点が大きかったんですか?

KREVA:昼と夜で2回のライブなんで、時間が限られてくるんです。1回目と2回目の間に客席を拭いて消毒しなきゃいけないし、会場のコロナ対策もしなきゃいけないから、時間がきっちり決められている。久しぶりにライブをやるからこれも見せたいしあれも見せたいとなると、いつもだったら喋る箇所をカットして、短い曲を7曲くらい一気にやったり、最後も止めることなく一気にやったりしたんで、休む時間が少なくなって疲れたというのが一つ。あとはやっぱり全力を出している人、本気中の本気を出している人を見ると感動するなと思ったんです。そんなことしなくてもライブは成立したとは思うんですよ。久しぶりのライブだし、ビルボードだし、その空間に甘えてゆったり座って、「久しぶりだからあんまり上手く歌えなかったですね」みたいなことも喋ったりしながら、温かい空気の中でライブするというのもあったと思うんですけれど、その発想が全くなくて。

ーーなかったですよね。

KREVA:むしろフルスロットルでやろうと。1曲目を歌って喉が潰れたとしても、それでもやりきるみたいな全力を、あの距離で見せたかったんですね。それゆえに、大きいステージよりも“常に引き受けている感じ”があった。それはすごく疲れましたね。

ーービルボードでやろうというのはKREVAさんが決めたんですか?

KREVA:久々にライブをやろうとなったときに、ビルボードしか考えられなかったんです。デカい声を出せばマイクを通さなくてもみんなに聞こえるような距離感で、ライブハウスみたいにごちゃっとするんじゃなくて、座って観れる。そうなるとビルボードかなって。去年のオンラインライブをやったのもビルボードライブ東京だったし、それより前にビルボードライブ大阪でやったライブが『王者の休日』初回限定盤に収録されたり、いろんな縁もあったので。自分から言わせてもらった感じですね。

ーー全力を出す、本気を見せるということを久しぶりのライブのテーマに決めた理由は何だったんですか?

KREVA:最初はメンバーとスタッフとZoomで選曲会議をしてたんですよ。その段階では全体的にビルボードに合わせた感じだったんです。具体的に言うとジャズテイストのものが多めだった。みんなから挙がってくる曲も、ジャズタッチのアレンジが似合いそうな、みんなは知らないかもしれないけどファンなら知ってるような曲が多かったんです。でも、実際にいざやってみたら「違うな」と思った。どうやら俺がやりたいのは、ビルボードの空間に合わせたライブじゃなくて、その規模でそのままアリーナに持っていってもできるような熱量と選曲のライブだということに気付いて。そこから気持ちが固まって、決めていった感じです。

ーー選曲についても聞かせてください。MCでは歌詞を重視してセットリストを決めたと言ってましたが、それはどういうことだったんでしょうか?

KREVA:思いっきりみんなに言葉を届けたいという気持ちがあって。それが乗っかってくる歌詞じゃないと選べなかった。ラブソングも少なかったし、楽しいパーティの歌もちょっと違う。もともと、楽しい感じの歌がいっぱいある方じゃないですけど、それでも最初の会議で出てきた選曲リストを見ながら「これは歌詞が違うんだよな」って言ってた気がしますね。

ーー「歌詞が違うんだよな」というのは、今言いたいこと、今歌いたいことじゃなかったということだと思うんですけど、具体的にはどういうことだったんでしょう?

KREVA:ラブソングで言うと、例えば「I Wanna Know You」はそうだったかな。ジャズタッチで、ウッドベースとかでやってみたりしたら、曲が会場にフィットするのは間違いないんだけど、歌詞が違うんだよなと思ってやらなかった。あとは「ma chérie」という3拍子の歌があって。音楽への気持ちを女性に喩えて歌っているんですけど、それもフィットしない。テクニックを見せたいとかじゃないんだなという感じはしましたね。

〈いけるなら絶対いっとけ〉が表すマインド

ーー逆に、セットの中で「これは外せない」「真ん中だ」と思った曲は?

KREVA:1曲目に新曲をやったんですけど、その次にやった「人生」という曲はいつも歌っていて「いいな」って思います。あとは「C’mon, Let’s go ~2019 Ver.~」ですね。「人生」は『AFTERMIXTAPE』に入ってる曲で、「前は毎週末パーティやって遊んでたけど今は違うよね。でもそれも人生だから楽しんでいこう」という歌詞なんです。書いた時はシンプルに、DJやってみんなで飲んで騒ぐようなパーティを最近やってないなっていう歌だったんですけど、コロナ禍の中で意味が変わって、ライブができてない“今”みたいなところにすごくハマったから。1曲目の「Finally」を熱量全開で歌った後に、この曲は伝えたい歌詞だったので外せなかったというのが一つですね。

C’mon, Let’s go

ーー「Finally」はライブをやることが決まってから書いた曲ですか?

KREVA:そうですね。最初から聴いたことのない言葉を全力で歌ったら、観にきた人もグッとくるんじゃないかと思って、ライブを想定して書いたんですけど、これって本当に全力で歌わないと成り立たない曲で。練習してもなかなか苦しくて歌えないんですよ。だからすごく苦労しました。前傾姿勢になって、腹筋をしめて、全身を使わないと歌えない。それくらい全力を出すというのと、やっとライブができるという気持ちを形にした曲ですね。

ーー「C’mon, Let’s go ~2019 Ver.~」についてはどうでしょう?

KREVA:「C’mon, Let’s go 〜2019 Ver.〜」はもともと東日本大震災の直前に書いていて、それが偶然2011年の状況にハマっていった歌で。「今でも勇気づけられます」と言ってもらえる曲だったので、今回歌いたいなと思ってたんです。サビが〈みんな声掛け合ってあがる作戦で〉となっているから、ちょっとそこはどうかなって考えたんだけど、具体的に声を出そうということじゃなくて、“やれる100%をやろう”という歌だったから。みんなでやれることをやっていこうって伝えるという意味ではいいかなと。「人生」と「C’mon, Let’s go ~2019 Ver.~」の2曲は外せなかったですね。

ーー結果として、“メッセージソングとしてのKREVA”が露わになったライブだったと思います。

KREVA:そうなりましたね。

ーーKREVAさんのメッセージ性って、独特の温度感がありますよね。例えばそれを象徴するフレーズとして、「アグレッシ部 〜2019 Ver.〜」とか「KILA KILA 〜2019 Ver.~」とか、いろんな曲に〈行けるなら絶対行っとけ〉というリリックが出てくる。これ、不思議なワードだと思うんですよ。

KREVA:そうそう。「行けるなら」っていうのが、最高な温度感というか。

ーー言ってしまえば、例えば飲み会とかに誘われて「行けるなら行くよ」って言ったら、ほぼ「行かない」って意味じゃないですか。

KREVA:ははははは! たしかに。

ーーでも、KREVAさんの〈行けるなら絶対行っとけ〉はそういうことじゃない。鼓舞しているし背中を押すメッセージなんだけれど、相手に条件を委ねている。そういう意味でも、メッセージ性としてユニークだなと思うんです。そういうスタンスが多い気がするんですが、どうでしょう?

KREVA:無理やりということはないですね。「行けるなら行きなよ」と言ったとき、その人の「行ける」が寿司一貫くらいだったらそれでいいし、全部食べられるならそれでいいし。

ーーその原点ってなんでしょうね?

KREVA:最初に書いたのは、KICK THE CAN CREWの「タカオニ2000」のときだから、ほぼ20年前なんですけど、〈いけるなら絶対いっとけ! だって俺らは現在進行形!〉っていう歌詞を書いたら、LITTLEがすごくいいよって言ってくれて。「いけるなら」がいいんだって。俺はその時はそこまで深い意味を考えてなかったんだけど、そう言ってもらえて、それが面白いんだと思えた。で、それが自分の考えだと気付いたんですね。そこから気に入って使っている感じです。

ーー〈いけるなら絶対いっとけ〉が象徴するようなマインドやメッセージが込められた曲を挙げるならば、どうでしょう? 「C’mon, Let’s go ~2019 Ver.~」はそうですよね。

KREVA:そうですね。「やれることやろうよ」みたいな。「人生」のサビでも〈やれることやれるだけやって生きていくぜ〉と言っているし。「変えられるのは未来だけ」も近いものがありますよね。そりゃそうだって、流れに委ねているというのはあります。

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