KREVAが語る、2020年コロナ禍での活動と新曲で伝えたいこと 「いろんなものが結実してる感じがある」

KREVAが明かす、コロナ禍での活動

 初のオンライン開催となった『908 FESTIVAL ONLINE 2020』や、数々のコラボレーションなど、精力的な活動を繰り広げてきた2020年のKREVA。12月23日にリリースされるニューシングル『Fall in Love Again feat. 三浦大知』は、「困難な時代を乗り越えて、また一緒に集まろう」という思いをラブソングの形で表現した楽曲だ。

 今年にはPUNPEE「夢追人 feat. KREVA」、ZORN「One Mic feat. KREVA」、tofubeats「RUN REMIX (feat.KREVA & VaVa)」とフィーチャリングで参加した楽曲も評価を集め、先日に配信リリースされた「タンポポ feat. ZORN」も大きな反響を巻き起こしている。

 外出自粛期間の4月にスタートした自身のチャンネルでのYouTube Liveではビートメイキングやリリックの解説などこれまで『完全1人ツアー』などライブの場で展開してきたエデュテイメント的な内容も展開。持ち前の行動力と発想力で、コロナ禍でありながら充実の一年となった2020年について、語ってもらった。(柴那典)

どうやってみんなに楽しんでもらうか 

ーーKREVAさんにとっての2020年を振り返って聞いていければと思います。シンプルに、ここ最近は非常にコラボが充実していて、いい曲がどんどん出てきていると思うんです。

KREVA:そうですね。ありがとうございます。

ーーまず三浦大知さんとの「Fall in Love Again feat. 三浦大知」についてですが、これはコロナ禍の状況になって作った曲なんですよね。最初のきっかけはどういうところにあったんでしょうか?

KREVA 「Fall in Love Again feat. 三浦大知」MUSIC VIDEO

KREVA:今年の初めくらいにコロナ感染症の状況がどんどん悪くなってきた時に、自分もホールツアーを予定していて、大ちゃん(三浦大知)もホールツアー(『DAICHI MIURA LIVE TOUR 2019-2020 COLORLESS』)をやっていて。「この先どうする?」みたいな連絡を取り合っていたんです。

ーー本来なら2月27日から『KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」』のホールツアーが開催される予定でしたが、全公演無期限延期、29日のLINE CUBE SHIBUYAでは、アルバム「AFTERMIXTAPE」の全曲生演奏を無観客ライブという形で生配信されました。

KREVA:ホールツアーの初日のゲネプロで、衣装も全部着てセットも組んでリハーサルをしてる時に大規模イベントの自粛要請があって。その時点で俺の中では「このツアーはちょっとできないな」と思って、無しにしようと決めたんです。大ちゃんとも「この状況で誰かに何かがあったら良くないから、自分もその考えで間違いないと思います」みたいなやり取りをしていて。「今までやったことないけど、ネットでグッズを売ってみてもいいのかな、みたいな話を社長にしたよ」とか具体的な対応の話も含めて、いろんな話をしてたんです。で、4月にツアーの無期限延期を発表したくらいの時に、大ちゃんが「新曲の制作やインスタライブなど是非一緒に何かやりたいです!」って言ってくれたんです。俺もすぐに「曲も作りたいし、インスタライブもやろう」って言って。その次の週には一緒にインスタライブをやって。自分もそれに影響を受けてYouTube Liveを始めてみたりして。そういう時期に家にいたから曲も作っていたんで、それを大ちゃんに送って。そこから時間をかけながら、この曲ができていったっていう感じですかね。

ーー発表したのは『908 FESTIVAL』でしたけど、本当にコロナ禍の外出自粛期間のリアルなドキュメントとして作っていたんですね。

KREVA:そうです。もちろん大ちゃんとはいつだって曲を作りたいと思うけど、今回は自然とそういう感じになりましたね。

ーー三浦大知さんとKREVAさんはずっと近しい関係だと思うんですが、ミュージシャンだけでなく全ての人が大きな影響を受けた緊急事態宣言の時期に、特に親密に連絡をとりあっていたというのはどういう理由でしたか。

KREVA:やっぱり同じような状況にいたのは大きいですね。普段から連絡を取り合ってたのはもちろんありますけど、お互いホールツアーの予定があったし、その時は我々だけじゃなくて、世の中的にも、みんなライブをやるのかやらないのか、様子を伺ってるような状況があったと思うんですよ。その中で大ちゃんとは、表に立つ人同士としてどうするべきかというやり取りをしていたので。

ーー三浦大知さんのスタンスや行動にはどんな刺激を受けましたか?

KREVA:すぐ誘ってくれたんです。俺も「ライブが何本なくなった」とか「この仕事がなくなった」とかではなく、「どうやってみんなに楽しんでもらおうかな」ってすぐに頭が切り替わっていたので、そんな中でインスタライブに誘ってもらって、一緒にやったら結構喜んでもらえたんですよね。家から生で喋ってるっていうのが。そこから「じゃあ自分は何をしようか」となった時に、「YouTube Liveかな」と思って。

ーー4月にYouTube LIVEを始めたんですよね。僕も初期から見ていましたが、最初はiPhoneでやってたのが、ビデオミキサーを導入したりどんどん機材が充実していって、ビートメイキングの様子を見せるようなしっかりした内容になっていった。あのあたりは非常にKREVAさんらしいポイントだなと思ってました。

KREVA:それこそ動画の編集とかを始めたのも今年からだから、まだ1年もやってないんです。だいぶスキルアップはしてるんじゃないかっていう気がします。

ーー基本的に、アーティストのYouTubeチャンネルって、ミュージックビデオがただ載っているだけのものも多いと思うんです。チャンネルの運用をマネジメントやレコード会社に任せてる人もほとんどでしょうし。そんな中でKREVAさんがある種のユーチューバー的なやり方で動画をあげてファンの人とコミュニケートすることを選んだ理由と、そこから見えてきたことってあるんじゃないかと思うんですが。そのあたりはどうでしょう?

KREVA:まず何でYouTube Liveをやったかと言うと、Twitterは情報拡散ツールとしては有効だけど、雰囲気や空気感を考えるとコミュニケーションする場所じゃないなと思って。で、Instagramは本当に自分のコアなファンだけが見てる平和な世界という感じだった。だからインスタライブをやるよりも、むしろまだ踏み込んだことなかったYouTubeでやってみよう、と。チャンネル自体は十何年前からあったけど登録者数は伸びてなかったし、それを伸ばすには自分が入ってやっていったらいいんじゃないかと思って。

ーーなるほど。やってみてどうでした?

KREVA:やってみて思ったことで言うと、「本当にみんな、いろんなことがわかってないんだな」っていうのは感じましたね。曲の作り方とか、自分がこだわってる部分だったり、そういうことどんどん伝えていくのは大事だなと思いました。自分で言うのも変ですけれど、そういうところがわかってもらえないと、自分の良さもうまく伝わらないんじゃないかなと思った。だから、以前はライブでしかやってなかったけど、ビートメイクも見せた方がいいなと思ったし、最近だったらラップの解説をして「これだけ韻を踏んでるんだよ」っていうのを伝えることもやってますね。

ーーたしかに、こういう形でミュージシャンがYouTubeでビートメイキングとかライミングを解説することはあまりなかったですよね。

KREVA:柴くんを前にして言うのもあれだけど、どの媒体の方でも、日本語ラップのライミングに関しての正しい評論、ライミングの評価をできる人ってほぼいないと思うんです。なぜならそのシステムがあまりにも共有されてないから。「これくらいのレベルでやってるんだよ」とか「これがいいんだよ」っていうのをやってないからわからないと思うし。例えばビートが格好いい、格好悪いっていうのも、どこがいいのか、何を選んで何を選ばないのかとか、ちゃんと見せていかないと伝わっていかない。それはどんどんやっていきたいことだと思ったし、それをやるには良い場所なのかなとは思いました。

ーー前には『完全1人ツアー』のような場所でそういうことをやっていましたよね。でも、その場でお客さんを盛り上げてエンターテインメントにしないといけないステージ上と違って、YouTubeだともっとリラックスして解説に徹することができる。そういうメリットもあるんじゃないかなと思いました。

KREVA:そうですね。まさに。コロナ禍の影響で、YouTubeの世界にお笑い界の方とかがいっぱい入ってきて。 そうすると何が際立つかって、話の上手さが圧倒的じゃないですか。そういうことで言うと、少なくともビートを作ってる人間の中では、俺はぶっちぎりで話がうまいと思うんですよ。人前でもやってるくらいだから。そこは強みなのかなと思ってます。

ーー4月にはそうやって新しい形の発信を始めたし、6月にはThumvaというプラットフォームのこけら落としとして有料オンラインライブ『①(マルイチ)』を行った。おそらく、この状況の中で一度動きを止めたアーティストも多かったと思うんです。でも、KREVAさんは逆にアクセルを踏んだような印象があります。

KREVA:プラス、本当に偶然ですけど、あれだけ客演に声をかけてもらったというのもデカいですね。イケてる人から声がかかって、全部ミュージックビデオがちゃんとあって、全部きっちりと評価された。この状況で勢いに拍車がかかったように見えた。PUNPEEもZORNも「俺と一緒にやってヒップホップドリームが叶った」みたいに言ってくれるんですけど、俺からすると、音楽始めて25年、ソロデビューして16年で、こういう状況になれるわけですから。それはもう、逆に俺にとってもヒップホップドリームだなと思ってますね。

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