一度火が付けばロングヒットの可能性大 2021年上半期音楽チャートに表れた人気曲の最新傾向
CDセールスからストリーミングサービスなどの視聴回数へとヒット曲の指標が移ったことで、“世の中で今聴かれている楽曲”がチャート上に表面化してきた。かつてはCD売上こそがヒットの指標であったが、現在CDは「モノを手に入れる」という付加価値として購入されていることも多く、CDが売れている作品は必ずしも広くの人に聴かれている作品とは限らないからだ(ファンベースの規模を図る指標としては有効である)。その点、Billboard JAPANが公開している複合チャート「Hot 100」は、CDセールスだけでなく、ラジオやダウンロード、ストリーミング、Twitter、カラオケといった様々な指標から社会への浸透度を計測しているため、より正確な“実態”を表していると言えるだろう。
さてそれを踏まえた上で、Billboard JAPANが先日公開した今年上半期の総合ソングチャート「Hot 100」のトップ10を見てみたい。
1位 優里「ドライフラワー」(2020年作)
2位 LiSA「炎」(2020年作)
3位 BTS「Dynamite」(2020年作)
4位 YOASOBI「夜に駆ける」(2019年作)
5位 Ado「うっせぇわ」(2020年作)
6位 菅田将暉「虹」(2020年作)
7位 NiziU「Step and a step」(2020年作)
8位 YOASOBI「怪物」(2021年作)
9位 Eve「廻廻奇譚」(2020年作)
10位 YOASOBI「群青」(2020年作)
(※1)
以上の結果で注目したいのが、丸括弧内で記した通り今年リリースされた作品はYOASOBIの「怪物」のみで、その他のほとんどが昨年に公開された楽曲だったことだ。「夜に駆ける」に至っては2019年の作品で、長期的なヒットを記録していることが分かる。毎週のように上位が入れ替わるCDセールスのランキングとは大きな違いだ。
このように、本来人は短スパンでよく聴く作品を変えることは少ない。もちろん個人レベルでは日々プレイリストを入れ替えたり、逆に何年も同じ作品を聴き続けたりと、それぞれ差はあるだろう。しかし“大衆”レベルでは月単位、あるいは年単位でトレンドが移り変わっていく。それが複合チャートが導き出した“実態”だ。
その上でこのトップ10にランクインした作品の傾向に注目してみると、同記事内でも指摘されている通り「TikTokやYouTubeといった動画プラットフォームからのヒット」が目立つ。例えば「ドライフラワー」や「うっせぇわ」「夜に駆ける」などは、TikTokで多くのユーザーが使用したことがヒットの要因の一つとなった。同様に同チャートにランクインした作品の多くが、SNSで話題となりネット上でシェアされたことで広まったもの。これは非常に興味深い点である。