松下洸平×松尾潔 特別対談 2度目のメジャーデビューでタッグ、両者をつなぐ共通の“バランス感覚”

松下洸平×松尾潔に共通する感覚

目指したのは“お箸の国のR&B” 楽曲でも活きた松下洸平の声の良さ

松下洸平×松尾潔(写真=藤本孝之)
ーー松下さんのルーツである、R&Bとポップスの融合も体現されてますよね。

松下:そうなんです。

松尾:先ほども言ったように、僕自身も根っこの音楽性はマニアックなんですが、それがポップに広がることにゾクゾクするような醍醐味を感じていて。自分もそのひとりだから言うんですが、マニアだけを唸らせるのは意外に簡単な気もしますし。

松下:僕もマニアックだけではなくて、大衆性が加わるのが素敵だなと思っていて。考えてみると、学生の頃からずっとそうだったんですよ。音楽学校に通っていたときに、今も僕のバンドでギターを弾いてくれているカンノケンタロウさんと出会って。彼はNulbarichでギターを弾いているんですけど、僕も彼も根がポップスなんです。二人で路上ライブをやっていたこともあるんですが、どちらともなく「玉置浩二さんの曲やらない?」とか「ハナレグミ歌おうよ」と言い出したり。

ーーその頃からポップス志向があったと。

松下:せめぎ合っていたんですよね、たぶん。まわりには「R&Bシンガーたるもの」みたいな人もいたし、自分のポップな部分をどこまで出していいかわからなくて。でも、健太郎と二人で話すときは「CHEMISTRY最高だよな」って(笑)。あと、ゴリゴリのヒップホップやR&Bを追求した結果、USの音楽と区別がつかなくなるのって、どうなんだろう? という気持ちもあって。日本人にしか感じられないものもあると思うし……。

松尾:まさに“お箸の国のR&B”だね。お箸で食べられる美味しいパスタを作りたいというか。

松下:そうなんです。専門店の人が食べても美味しくて、でも、ファミレスでも食べられるような。

松尾:それ、僕がずっと目指していることですよ。理解者がここにいた!

松下:ハハハハ(笑)。

松尾:いま話に出ていたカンノケンタロウさん、「つよがり」でもギターを弾いてもらっています。そこにもストーリーがありますね。でも、いちばんはもちろん洸平さんの声ですよ。これまでいろいろな曲をプロデュースしてきましたが、「歌手って何ですか?」と聞かれたら、やっぱり声なんです。「筆が良くなければ絵を描く必要はない」とさえ思っていますし、いい曲は間違いなく、いい声を必要としているので。役者としての彼の声の良さはみなさんご存知でしょうが、歌声も素晴らしい。この声があったからこそ、僕らもリミッターをかけることなく表現に専念できたんだと思います。ちょっとした歌のタメひとつに、「よく音楽を知ってるなあ」という感じが凝縮されているし、同時にフレッシュさもあって。ほめ過ぎかな?

松下:ほめ過ぎですね(笑)。

松下洸平×松尾潔(写真=藤本孝之)

ーー俳優としてのキャリアも、歌に影響を与えているのでは?

松下:音楽の経験や情報がまだまだ少ないので、何とも言えないところもあるんですが、舞台を続けてきたことはよかったと思います。「目の間のお客さんとどうコネクトするか」を10年間やってきたことは、ライブにも活かされていて。表現の方法は違えど、同じ空間を共有するために大事なこと、ステージ上での自分の見せ方、お客さんの楽しませ方には共通するところがあるので。

松尾:なるほど。僕が作るものはR&Bベースであること、ポップであることのほかに、曲を通して、物語を提示したいんですよね。歌詞やサウンドの作り方にしても、シアトリカル(演劇的)な効果を意識しています。洸平さんはまさにシアターで活動されてきた方だし、「つよがり」のレコーディングでも、歌詞の解釈が本当に深いなと。言葉、歌に対するリテラシーが高いというのかな。スタッフ陣も全員立ち会ったんですが、スタジオで「職業作家冥利に尽きるね」という話をしていました。

松下:ありがとうございます。「つよがり」は主人公の像が明確で、歌いやすかったんですよ。強がっている主人公の気持ちを受け取り、表現する作業は芝居とも近くて。4分半の長台詞をいただいたときの感じというか、「ここにマックスを持ってくるために、この部分を抑えて」みたいな緩急をつけたり。

松尾:今のはすごくいいコメントであると同時に、作詞した立場としてはちょっとコワイな。この歌詞が長台詞だとすれば、たとえば(今春松下が主演した『カメレオンズ・リップ』を手がけた)ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの台本と比較されてるわけでしょう?

松下:いえ、そういうことではないです(笑)。

松尾:つまり、演じるという視点を持った歌い手ということですよね、洸平さんは。

松下:歌っていてもすごく面白かったですね。曲の最後で〈それだけがぼくの最後のつよがり〉〈きっと最後のつよがり〉と続くんですが、ボーカルディレクションの方に「ブレスを入れて、すぐに最後の歌詞を歌ってみて」とアドバイスをもらって。やってみると、強がっている主人公の像がさらに際立って聴こえたんですよ。感情の込め方というよりもテクニックの問題なんですけど、「こうやって歌えば、確かにそう聴こえるな」と。それ以外にも、ちょっとタメたり、あえて真っ直ぐに歌うことで伝わるものもあって。それも自分一人では見つけられないことだし、いろいろと勉強になりました。

松下洸平(写真=藤本孝之)

松尾:歌のレコーディングは1日で終わったんですけど、スタジオに入ってた数時間の中でも、その場でスキルアップしていくのがわかりました。

松下:やればやるほど、歌い方によって気持ちの伝わり方が変わることがわかって。「これ、一生できるな」と思いました(笑)。歌えば歌うほど、主人公の像が明確になって、聴き手の方も触りやすくなると思うんですよ。そうやって掴みどころを増やすことで、「つよがり」という曲が僕だけのものじゃなくなるんだろうなと。

松尾:「僕だけのものじゃなくなる」って、また良いことを言いますね。制作に入った当初、「どんな曲にするか」というブレスト的なミーティングのときも、そういう話をしていたんですよ。たとえば街のなかで聴こえてきたり、ストリーミングでふと流れてきて、「いい曲だな。誰? あ、松下洸平が歌ってるんだ」という出会いがたくさん生まれるといいなと。今の時点で彼の歌を聴いている方は、「松下洸平の歌を聴きたくて聴く」という能動的なスタンスだと思うんです。それもすばらしいことだけど、「つよがり」は、彼のネームバリュー、フェイスバリューとは違うところでも一人歩きしてほしい。リリースされた後、どんなリアクションがあるか楽しみですね。

松下:僕もすごく楽しみです。

ーー松尾さんが、この先の松下さんに期待することは?

松尾:ここ数年で松下洸平という人は、同年代の役者から羨望の眼差しを向けられる存在になった。ただ、エンターテインメントにおける彼の初恋は、音楽だったと思うんです。それをずっと大切にしてきて、ここから夢の続きが始まる。そのお手伝いをすることが、今回の僕の仕事でした。極端なことを言えば、今の洸平さんにふさわしい曲がなければ、デビューしなくてもいいわけで。

 「つよがり」が、それに見合うだけの曲になっていれば嬉しいです。さっきも言った通り松尾潔っぽい曲ではあるんだけど、数カ月後、数年後には「松下洸平っぽい」と言われるようになったらいいなと思っています。R&Bというジャンルはプロデューサーの存在が大きいと言われますが、人の心に訴えかけるのはやはり歌い手であり、スターなんですよ。ジャネット・ジャクソンがいなければジャム&ルイスはいないでしょうし。それは昔から今に至るまで変わっていないと思います。昨年亡くなった筒美京平さんも、「歌い手がいなければ、作曲家が活躍する場はない」と常におっしゃっていて。「つよがり」でも、そのことを強く感じましたね。

松下洸平(写真=藤本孝之)
松下洸平(写真=藤本孝之)
松下洸平(写真=藤本孝之)
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ーー「つよがり」によってアーティストとしての活動が本格的に再開。この先のビジョンも見えていますか?

松下:スタートを切ってから見えてくる景色もあると思っていて。まずは「つよがり」をできるだけ多くの人に聴いていただいて、どういう反応があるかを確認したうえで、次の一手を決めたいんですよね。個人的には、僕のことを知らない人に届けたいという気持ちで歌っていきたくて。さきほど松尾さんが言われたように、「この曲、誰? 松下洸平か」という出会いを増やすなかで、聴いてくれる人の背中を押したり、一緒に泣いてあげられるような楽曲を歌っていきたいなと。俳優に専念してからは、ずっと独りよがりだったというか、「自分が楽しく歌えればそれでいい」という感じだったんですけど、それこそ僕の“つよがり”だったなって。

松尾:上手いこと言うね(笑)。

松下:(笑)。「つよがり」という素晴らしい土台を用意していただいたし、最初のデビューの際にもお世話になっていたビクターの方も「また一緒にやりましょう」と言ってくださって。今は胸を張って「たくさんの人に聴いてほしいです」と言いたいです。

オリジナル動画も公開!

松下洸平 絶賛!最近お気に入りの音楽は?【ONE of Recommend】

■配信情報
「つよがり」
7月14日(水)先行配信スタート
音楽ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサイトにて
配信はこちら

※対応ストリーミングサービス:Apple Music、LINE MUSIC、Amazon Music Unlimited、AWA、KKBOX、Rakuten Music、RecMusic、Spotify、YouTube Music

■リリース情報
メジャーデビューシングル『つよがり』
8月25日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)VIZL-1934/2,600円(税込)  
通常盤(CD)VICL-37603/1,400円(税込)
デビュー記念セット(初回限定盤+ハンカチ+エコバック)VOSF-10543/6,000円(税込)※ビクターオンライン限定商品

<収録内容>
【CD】※初回限定盤・通常盤
M1. つよがり
M2. STEP!
M3. みんなが見てる空
M4. つよがり(Instrumental)
M5. STEP! (Instrumental)
M6. みんなが見てる空 (Instrumental)

【DVD】※初回限定盤
「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2021 HEART to HEART」
・Live at 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(2021.3.6)
STEP! / STAND UP! / みんなが見てる空
・Tour Documentary

【グッズ仕様】※デビュー記念セット
<エコバック(ポーチ付)>
サイズ:
本体/約420×430×130(mm)
持ち手/約25×550(mm)
ポーチ/約190×145(mm)
素材:ポリエステル

<ハンカチ>
サイズ:約250×250 (mm)
素材:綿100%
※画像はイメージ

 <『つよがり』チェーン別オリジナル特典>
※デザインは後日発表
・タワーレコード全国各店/タワーレコード オンライン「ポストカードA」
HMV 全国各店/HMV&BOOKS online「ポストカードB」
・TSUTAYA RECORDS(一部店舗を除く)/TSUTAYAオンラインショッピング「ポストカードC」
※TSUTAYAオンラインショッピングでの特典提供は予約分のみ対象
・楽天ブックス「ポストカードD」
※楽天ブックスは特典つき商品のカート購入分が対象
・セブンネットショッピング「ポストカードE」
・ビクターオンラインストア「ポストカードF」
・Amazon.co.jp「メガジャケ」

<予約>
■ビクターオンラインストア
・「つよがり」デビュー記念セット:https://victor-store.jp/item/163431
・「つよがり」初回限定盤:https://victor-store.jp/item/163051
・「つよがり」通常盤:https://victor-store.jp/item/163050

■Amazon.co.jp
・「つよがり」初回限定盤:https://www.amazon.co.jp/dp/B0995SXRY5
・「つよがり」通常盤: https://www.amazon.co.jp/dp/B0995TH494

<ファンクラブ会員限定特典>
※松下洸平ファンクラブ会員、ビクターオンラインストアでの購入者が対象
【デビュー記念セット】(初回限定盤+ハンカチ+エコバック)購入「A4クリアファイル」
【初回限定盤】(CD+DVD)または【通常盤】(CD)購入「本人デザインメッセージカード」

<FC会員限定特典付CD予約>
・「つよがり」デビュー記念セット:https://victor-store.jp/item/163434 
・「つよがり」初回限定盤:https://victor-store.jp/item/163433
・「つよがり」通常盤:https://victor-store.jp/item/163432

ファンクラブ:https://www.kouheiweb.com/k_room/

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