パンデミック期でも“何一つも奪われてない”、ずっと真夜中でいいのに。の強さ 『CLEANING LABO「温れ落ち度」』レポート
昨年11月の『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』との比較でいうと、バンドのサウンドの根幹となるギターとドラムの音色の違いにも大いに興奮させられた。『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』ではJ-POP&J-ROCKのバンドのライブにありがちな音源よりも強調される高音のピーキーさが耳についてしまったが、今回は(聴き込めば聴き込むほどかなり細部まで周到に配慮されて録音されていることがわかる)音源の音色を再現しつつ、その上でライブならではのインプロビゼーション的なダイナミズムも十全に伝わってくる素晴らしいライブサウンドが実現されていた。それは、『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』を経ての、音響スタッフを含めた飛躍的な成長と言っていいだろう。
今回の『CLEANING LABO「温れ落ち度」』で特筆すべきは、大所帯のバンド編成だけでなく、実験室(LABO)をコンセプトとしたそのステージセットにも惜しみなくアイデアとセンスと膨大な労力が投入されていたことだ。『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』でステージ演出の要となっていた「郊外のコンビニ」のセットも流用されていたが、ただ流用するだけでなく、そこに増築(ずらりと並んだドラム式洗濯機はコインランドリーを模したものだろう)とカスタムを加えることによって、前回のライブとはまったく異なる風景を現出させていた。コスト的にそれを可能にしたであろう、昼夜2公演×2日間の4公演というイレギュラーなスケジュールも、この終わりの見えないパンデミック期を乗り切るためのクレバーな方法として支持したい。
「パンデミック期が逆に功を奏したのでは?」という点では、もっともっと多くの人たちに見られるべきだった(実際にこの時期の公演だからチケットを取るのを断念した人、そして単純にチケットを取れなかった人も膨大にいただろう)今回のステージのWOWOWでの放送(2021年6月27日)が決定したことも嬉しいサプライズだ。最後に、ファン丸出しの意見を言うなら、1年延期されたことによって『ぐされ』リリース前だったら演奏されたに違いない「低血ボルト」「Ham」「JK BOMBER」などの「近過去の名曲」がセットリストから漏れてしまったことだけが残念だったが、それもこの先の楽しみにとっておこう。本公演の後も、ACAね、RIN音、Yaffleによるダークでプログレッシブなビートミュージック系のコラボ曲「Character」、さらに2日目の夜公演でサプライズ披露された、珍しくACAねのパーソナルな心情がストレートに綴られた(ように思える)新曲「あいつら全員同窓会」と、リリースラッシュが続いている。常に動き続けているずとまよの「現在地」。この時点で一つだけはっきりと言えるのは、全世界的に大きな危機をもたらしたこのパンデミック期にあっても、ずとまよは「何一つも奪われてない」(「正しくなれない」)ということだ。
■放送情報
ずっと真夜中でいいのに。『CLEANING LABO「温れ落ち度」』
6月27日(日)20時15分〜 WOWOWにて放送
ずっと真夜中でいいのに。『やきやきヤンキーツアー(炙りと燻製編)』
6月20日(日)22時30分〜 WOWOWにて放送