三代目JSB、疲れた心を包み込む温かなメッセージ 意欲的なアレンジにも挑んだ『100 SEASONS / TONIGHT』

 2曲目の「TONIGHT」は初のELLY/CrazyBoyによるプロデュース楽曲であり、幻想的な音像と艶美な歌声がダウナーな心地良さを作り出すオルタナティブR&Bソング。同曲はELLYを含む3人のボーカルが楽曲の各セクションを完全に分業するという、グループとしては新鮮なボーカル構成となっているが、各人がソロアーティストとしても活動しているだけあり個々のキャラクターが際立つ形となっている。登坂の深く艶めいた歌声とELLYのどこか退廃的な美を感じるフロウが交差し積み重ねられた不穏な情感は、サビを歌う今市隆二のファルセットによって切ない情愛へと昇華される。また、音色の切迫感が、最後のフレーズ〈baby just show me a sign〉からルート音へ戻っていく中で緩和するという流れも、今市の歌声によって一際美しい着地を生み出しているように感じられた。

 また、「TONIGHT」に関してはリリース当日にデジタル限定で2種類のリミックスVer.が発表された。トラップのビートが強調されグルーブ感が大きく増した「TONIGHT (R&BTrap Remix)」と、浮遊感のあるギターサウンドが挿入される「TONIGHT (XXX Remix)」があり、特に後者は鮮烈な印象を残す挑戦的なアレンジとなっている。そもそも、同一のシングル曲を多様なアレンジで同時リリースすること自体、グループとしてもLDHとしても新鮮な取り組みであり、この点で本作は意欲作と言って過言ではないだろう。

 誰もが少なからず疲弊しているコロナ禍の2021年において、三代目JSBが打ち出してきたのは、冒頭にも記した通り“頑張りすぎなくていい”というメッセージだ。ただし、同時に今作では「TONIGHT」という楽曲とそのリミックスという挑戦的な試みがあり、彼らのさらなるクリエイティブへの意欲をも伝えてくれている。様々なキャリアを重ねてきたグループとして、これほど頼もしいことはない。10年目のその先がますます楽しみになる一作だ。

■日高 愛
1989年生まれの会社員。

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