FANTASTICS、タフな表現で魅せる“エンタテインメントの総合力” 八木&中島のツインボーカルも新境地に
2曲目に収録の「Play Back」は、今年2月〜3月にかけて放送されたFANTASTICS初の冠番組『FUN!FUN!FANTASTICS』(日本テレビ系)の主題歌。番組のコンセプトに連動して、80年代後半に隆盛したユーロビートを大胆に取り入れたサウンドは、公開時から強いインパクトを残しており、彼らの80~90年代スタイルにおける一つの到達点となった。また、この曲も「STOP FOR NOTHING」と同様にDance Practice Videoが公開されているが、難度が高い動きの中にディスコティック感満載のダンスやステップを巧みに取り入れており、こちらも必見だ。カップリングではあるものの強い個性を持った楽曲なので、彼らの表現の幅を示すという意味でも需要な位置づけにあるように思う。
しかしながら、表現の幅を示すという点では3曲目の「M.V.P.」が現時点では最たるものと言えるかもしれない。小気味よいディストーションギターと軽快な8ビートに乗って弾むようなメロディが特徴のポップロック。これまでと大きく異なる音楽性はもちろんのこと、印象的なのは、確実に新境地と言えるアグレッシブな2人のボーカルだ。彼らの楽曲の中では、突出して長いラップパートの強い“がなり”を利かせたフロウには、こんな一面があったのか! と驚かされた。それでいて歌メロ部分の歌唱はこれまで以上に明るくポップなので、そのギャップもまた面白い。サビのシンガロングなど明確にライブを意識した箇所が多いため、新たなライブ定番曲としても楽しみな1曲だ。
さらに今作では、1月にJr.EXILE名義でリリースされた「WAY TO THE GLORY」のFANTASTICS ver.も収録。元より楽曲のテイストが彼らのイメージに近しいこともあり、清涼感あるアレンジと2人の歌声との心地良い調和が楽しめるようになっている。特にサビのユニゾンの素朴な響き方はこの2人ならではの魅力だろう。
爽やかで優しく素直な音楽表現のイメージが強いFANTASTICSだが、楽曲ごとに表情を変えて適応するタフな表現者であることが近々の作品では表れてきている。受け手を巻き込んで楽曲の世界へ力強く先導するポップスターへ成長するために、今作は大きな一歩となるはずだ。
■日高 愛
1989年生まれの会社員。