『大豆田とわ子と三人の元夫』の劇伴と主題歌はなぜリッチなのか ドラマとの相関関係を紐解く

 2021年4月クールが幕を開け、各局のテレビドラマが次々と放送開始されている。今期も数々の話題作が生まれているが、その一つが、松たか子主演の『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)だ。脚本家・坂元裕二の新作というだけでも引きは十分だが、2017年に彼とタッグを組み『カルテット』を大成功に導いた佐野亜裕美がプロデュースを手掛けており、さらに、松たか子が演じる大豆田とわ子(三度結婚し、三度離婚を経験)の元夫を、松田龍平、角田晃広(東京03)、岡田将生が演じる。このような座組みだけを見ても、今作が単なる話題作を超えた傑作となり得るピースがすでに揃っていたと言えるが、放送開始後、大きな注目を集めた要素がある。それが、今作を彩る「音楽」だ。今回は、『大豆田とわ子と三人の元夫』の劇伴と主題歌についてまとめていきたい。

劇伴

 今作の劇伴を担当したのは、坂東祐大。現代音楽からポップスまで幅広い領域で活躍する1991年生まれの作曲家であり、最近では、米津玄師とタッグを組み、「海の幽霊」「感電」「カナリヤ」など、昨年の大ヒットアルバム『STRAY SHEEP』に収録された数々の楽曲に米津との共同アレンジという形で制作に携わった。また、米津が嵐に提供した「カイト」の編曲や、この3月には、宇多田ヒカルの「Beautiful World (Da Capo Version)」のアレンジも担当。まさに今、音楽シーンの最前線で活躍中の音楽家である。彼は、脚本家・坂元裕二の希望を受けて、数々のオーケストラのスコアを制作(なお、3話のダンスシーンで流れたワルツも、今作のために書き下ろされたもの)。そして、番組公式Twitterによれば、編集された映像を見ながら自ら選曲も手掛けているという。

 また、劇伴だけではなく、なんと各話ごとにオリジナルの挿入歌まで制作。後述する主題歌とは別の形で、各話の物語に奥行きと深みを与えている。それぞれの挿入歌の制作に参加するミュージシャンが本当に豪華で、グラミー賞ノミネート歌手であるグレッチェン・パーラトをはじめ、BIGYUKI、LEO今井など、毎週、次々と音楽ファンを唸らせるラインナップが実現している。テレビドラマの劇伴のクレジットがこれほどまでの注目を集めることは極めて稀であり、SNSの盛り上がりを見ていると、今作がいかに、それまでの劇伴の常識を逸脱した大胆な企画であるかがよく分かる。

主題歌

STUTS & 松たか子 with 3exes feat. KID FRESINO「Presence I」
STUTS & 松たか子 with 3exes feat. KID FRESINO「Presence I」

 そしてもう一つ特筆すべきは、松たか子がメインボーカルを務める主題歌である。楽曲のプロデュースを手掛けているのは、星野源の楽曲参加以降、活躍の場をさらに大きく広げているトラックメイカー・STUTS。1話のエンドロールでは、KID FRESINOをゲストとして迎えた「Presence Ⅰ (feat. KID FRESINO)」が披露された。なお、サビ部分では、3exes(三人の元夫たち)として、松田龍平、角田晃広、岡田将生がコーラスとして参加している。

STUTS & 松たか子 with 3exes – Presence I feat. KID FRESINO (Official Music Video)

 そして1話の放送終了後に大きな話題を呼んだのが、エンドロールの「主題歌(1話)」という表記であった。それは、各話ごとに主題歌が変わっていくことを示唆していて、実際に2話以降は、その放送回の物語を反映したラップパートを俳優陣がラップし、毎回新しいゲストラッパーを迎えている。2話の主題歌はBIMが、3話の主題歌はNENE(ゆるふわギャング)がラップパート(および、俳優陣のラップのディレクション)に参加しており、今後の展開への期待が高まる。また、エンドロールの映像も、そのゲストをフィーチャーした完全撮り下ろし。もはや、ため息が出るほどに豪華である。既存のテレビドラマの枠組みにとらわれないクリエイティブな発想、及び、それを想像し得る限り最も高いクオリティで実現させた製作陣の本気度に圧倒される。

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