松たか子&椎名林檎の対極な歌が混ざり合うーー今夜Mステで「おとなの掟」初コラボ
真っ黒、真っ白。嘘、本当。好き、嫌い。白、黒。正解、不正解。幸福、不幸……。
これらの対極な言葉が連なる歌詞が印象的な「おとなの掟」。ちょうど1年前に放送されたドラマ『カルテット』(TBS系)の主題歌で、作詞作曲を椎名林檎が手がけた。「おとなの掟」は、同ドラマ内で、主演を務めた松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平からなる限定ユニット“Doughnuts Hole”が歌うほか、松たか子、椎名林檎&松崎ナオ、そして椎名林檎自身がセルフカバーした英詞バージョンの4種類がある。同じ楽曲なのに、ボーカルが変わるだけで、全く違う“色”を見せてくれるから面白い。もちろんそれは、アレンジの違いによる影響も大きいだろう。しかし、それ以上に、彼女らの“歌声”が、楽曲に新たな色を与えている印象だ。
当サイトでは同楽曲について、ドラマの内容とリンクした歌詞の魅力、椎名林檎のプロデュース力、歌に表れる松たか子らの演技力……とすでに様々な視点から伝えてきた。そこで今回は、松たか子と椎名林檎、それぞれの“対極な歌声の魅力”に着目したい。
一言で表すなら、松たか子の歌声は、長く付き合っている結婚間近な彼女、もしくは母親のような安心感がある。優しく包み込んでくれるような、温かさを帯びているのだ。特に、一つひとつの語尾を大切に丁寧に伸ばしていく、彼女の透き通った声は心地よい。加えて、そこにしっかりとした芯があり、凛とした強さも感じさせる。そしてまた、女優という役を演じるプロだからこその、ちょっと芝居がかった歌い方も魅力的だ。歌声だけで、『カルテット』で演じた巻真紀らしい対極な性質、神経質さと大胆さが表現されている。
一方の椎名林檎の歌声は、好きだけど手に入らない高嶺の花、もしくは魔性の女のようなセクシーさがある。少しハスキーがかった声に、余韻を残すような息の抜き方と抑揚の付け方。そして、空気を含んだような軽さと湿り気を帯びた艶やかさという、対極なものが同時に存在し混ざり合っているような不思議さ。どんなに目を凝らしても、靄がかかって、はっきりと正体が見えない、そんなミステリアスな雰囲気が漂う。だからこそ、聴けば聴くほど、歌の奥底にある“何か”が気になって仕方ない。そして気づいたらズブズブはまっているような中毒性がある。