BTS、新曲「Film out」が『劇場版シグナル』に与えるスパイス ドラマ版主題歌「Don’t Leave Me」から続く関係性

 4月2日に公開になった映画『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』では、つながるはずのない無線機が再びつながる。ドラマ版よりもスケールアップした内容で、違う時間を生きながらも供に大きな事件に立ち向かっていく三枝と大山の姿が描かれていく。

 映画の公開日に合わせてリリースされた主題歌、BTSの新曲「Film out」。back numberの清水依与吏が提供し、作曲にはメンバーのJUNG KOOKも参加している。

 スケールアップしアクションシーンもある劇場版には「Don’t Leave Me」の方が合うのではないかと一瞬思ってしまいそうになる。それほどに彼らの声は柔らかく、どこか切なさも増している。

 しかしこれが映画のスパイスになるのだろう。慌ただしくスリリングなストーリーの中で描かれる人々の心。誰かを想う切ない気持ち。その切ない気持ちの中には、相手に向けた愛情や信頼、恋しさなど温かいものがたくさん凝縮されている。この曲には、ドラマでも描かれている、それぞれの持つ“相手への想い”の温かさがうまく抽出され入れ込まれているのだ。これがうまく曲に混ざり合い、切なさはあるのに冷たさを感じない、ちょうど風に吹かれて桜が散っていくのを見ているときのような印象を作り上げている。

 歌詞にも、会うことが出来ない人を想う気持ち、その人の姿をどうしても求めてしまう姿がたくさんの比喩を用いながら表現されている。抽象的なこの描き方は、多くの人の共感を呼び起こすことができるのではないだろうか。誰もが抱いたことのある大切な何かに対する恋しさ、触れたくても触れられないもどかしさをBTSの優しい声が代弁してくれる。ボーカルラインの柔らかく透き通った声、ラップラインの落ち着いた包み込むような声。映画の主題歌としても、曲単体としても聞き応えのある1曲だ。

BTS (방탄소년단) 'Film out' Official MV

 BTSは併せて「Film out」のMVも公開。暖色の世界で描かれる切なさに魅了される作品に仕上がっている。どこか不思議な時空のこのMVにも、『シグナル』とのリンクを感じる。

■フルヤトモコ
1999年生まれの大学生。韓国のカルチャーと洋楽、本、映画など。
東京藝術大学 音楽環境創造科在籍。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる