BTS RM、新たな道を切り拓くリーダーとしての役割 今の時代に支持される“ラップモンスター”のメッセージ
BTSが『2020 Mnet ASIAN MUSIC AWARDS(通称:MAMA)』で、9冠を達成した。「Dynamite」で米ビルボードHot100で1位を獲得し、グラミー賞の最優秀ポップデュオ/グループパフォーマンス部門にノミネート。2020年はまさに「世界のBTS」を確立した年だ。
そのBTSのリーダーを担っているのが、RMだ。最年長ではない彼がリーダーに任命されているのは、誰もが認めざるを得ない圧倒的な“才”の持ち主だからだ。高校生でIQ148を記録し、英語を学べば独学でTOEIC900点に手が届く。大学修学能力試験(スハン)の模擬試験では全国上位1%に入ったことも。彼の流暢な英語があってこそ、BTSの活躍は世界へ広がったといっても過言ではない。
努力を重ねられる“秀才“であることに加えて、彼は感性の人でもある。繊細な感覚で自分自身の、そして周囲の人の痛み、苦しみを察知してしまう。だからこそ、それを開放する表現がRMには必要だった。自らを怪物化させ、世の中の毒を制する。それが“ラップモンスター”が生まれた理由ではないだろうか。
「9歳、いや10歳の時俺の心臓は止まった」とは、RMが1st MINI ALBUM『O!RUL8,2?』のイントロ「INTRO:O!RUL8,2?」で紡いだ言葉だ。国連総会で行なったスピーチでも引用されたこの言葉通り、9〜10歳で彼は世界を取り巻く大きな矛盾とぶつかる。大人は「人生を楽しめ」と言うけれど、実際に求められているのは社会の枠に収まる人生ではないだろうか。
空想することよりも現実を見つめ、心の声よりも他人の声に耳を貸し、そして自分の目で世界を見ようとせずに瞳を閉じて生きていく……RMも一時期はそれを受け入れようとした。だが、ラップモンスターが本能に呼びかける、「目を覚ませ、自分自身の名前を呼べ」と。
そして、小学校6年生でEPIK HIGHの「Fly」を聴きラッパーを目指す。
誰もが、自分のストーリーを生きるべきだと。それが、RMが持つビジョン。そして、その想いを一貫してBTSというグループで表現してきた。「自分自身を愛そう」「たった一度きりの人生、誰のために生きるんだ」と叫び続ける。その歌声は、社会が成熟するほどにシステムの一部に組み込まれているような感覚を抱く現代人に対して「目覚めろ」と言っているようだ。
もしかしたら、それはリスキーなことだったかもしれない。それこそ、作られた「アイドル」という型にはまって活動したほうが無難だったかもしれない。でも、RMの中のモンスターがそれを許さなかった。実際に、アンチの声に悩んだことも。そして、BTSを取り巻く環境は、決して穏やかな日々ばかりではなかった。
その様子にRMが心を痛めないわけがない。この道が正しかったのか。判断ミスだったのではないか……と、自問自答を繰り返しながら、それでも心の声を信じて走り抜けてきたのだ。世界中の人に届ける歌を歌うというのは、不安な顔をして目指せるような優しい道のりではないと覚悟していたから。