Ado「うっせぇわ」ヒットは必然だった? ボカロシーン流行の変遷を整理
Adoの「うっせぇわ」と雰囲気がどこか一致する楽曲はボーカロイドでも多く発表されている。
バルーンに影響を受けているという煮ル果実のヒット曲、「紗痲」。皮肉のきいた歌詞とキャッチーな音。煮ル果実は2018年に同曲がヒットして以来、現在に至るまでのボカロシーンを代表するひとりだ。
2020年12月に「ラブカ?」でAdoとコラボした柊キライも次世代を担うボカロPとして挙げられる。柊キライの原曲ではflowerが使用されているが、他のボーカロイドと比べて中性的なflowerの声質はAdoのそれと通じるものがある。
Kanariaも2020年に注目されたボカロPのひとりだ。MV再生回数2020万回越えの「KING」はGUMIの愛らしい声色で歌われるが、歌詞は裏腹に王の処刑を思わせるものだ。
いずれのMVもそれまで多かった清涼な印象を与えるものではなく、赤や青など一色を基調にしたものが多い。歌詞の雰囲気と合致した不敵な笑みを浮かべたイラスト、動きのあるリリックで構成されるMVも最近の流行りの特徴と言える。
syudouはこのような流れの中心にいると言っていいだろう。ボカロPとしてだけでなく楽曲提供も行っているsyudouは、ボカロやライバーなどをつなぐ架け橋のような存在にも成りうる。Adoが歌い、世代を超えて話題を呼んだ「うっせぇわ」も同様である。
「うっせぇわ」ヒットも後押しになり、新たな段階に進んでいるボカロシーン。ソフトに歌唱させるゆえ鋭い表現になれる側面も、歌い手を起用するゆえ感情を発露できる面もあるだろう。「うっせぇわ」のような楽曲をうけて、これからどのような道筋を描いていくのだろうか。
■村上麗奈
2000年生まれ。2019年、音楽系専門学校在学中に執筆活動を開始。卒業後、フリーランスとして活動を本格化する。
Twitter:@r_dorfer_