草なぎ剛、“最優秀主演男優賞”受賞が心に響いた2つの理由 「人生を全うする」俳優が証明したもの

 草なぎ剛が、映画『ミッドナイトスワン』で『第44回日本アカデミー賞』にて最優秀主演男優賞を獲得した。発表と同時に、SNS上では草なぎの名前がトレンド入りし、全国から拍手喝采が巻き起こった。

監督たちを魅了してきた「真の実力者」

草彅剛
草彅剛

 今回の受賞がこれほど多くの人に感慨深く映ったのは、大きく2つの理由があるように思う。1つ目は、多くの人が草なぎのことを「もっと評価されて然るべき実力者」だと信じてやまなかったこと。1991年にSMAPとしてメジャーデビューした草なぎ。実に30年というキャリアの中での初受賞。もっと早くに受賞していてもおかしくなかったとさえ思う。

 なぜなら、かねてより草なぎの演技は絶賛され続けてきたからだ。主演舞台『蒲田行進曲』で演出家・つかこうへいから「大天才」と評され、主演映画『日本沈没』では原作者・小松左京から「草なぎくんにやってもらいたかった」と直接指名され、監督・樋口真嗣から「役が憑依しコントロール自在」だと驚かれたことも。

 「監督が心から話が出来る俳優」(監督・星護 ※ドラマ・映画『僕シリーズ』、映画『僕と妻の1778の物語』)、「多くの監督さんが何度も仕事したくなるのも頷ける」(監督・宮藤官九郎 ※映画『中学生円山』)、「役者に役が“乗り移る”瞬間を、僕は初めて見た」(監督・三谷幸喜 ※舞台『burst!~危険なふたり』)……と、これまで草なぎと共に作品を手掛けた監督たちの絶賛の声を挙げたらきりがない。

 もちろん、映画『ミッドナイトスワン』の監督・内田英治も、草なぎの持つ天賦の才に魅了された1人。本作では、トランスジェンダーの凪沙を演じた草なぎ。撮影時、スタッフが準備をしている間も凪沙の部屋のセットで、ごく自然にくつろぐ草なぎの姿に驚かされたという。役と同化していく姿を目の当たりにした内田監督は「もはや芝居ではない気がします。作る演技を超えている雰囲気がしました」とも続ける(※1)。

 毎作、監督の予想を超える演技が見られること。各作品で見せる演技力が素晴らしいのはもちろんだが、その姿を見た新たな監督が、あるいは過去にタッグを組んだことのある監督が「今の自分となら、もっと面白い作品を作れるのではないか」と思わせるのが、俳優・草なぎ剛の魅力。

 作品1つを生み出す以上のパワーが、演劇界を突き動かすエネルギーが、彼にはある。それは、まさに日本のエンターテインメント業界において、オンリーワンと呼ばれるものではないだろうか。

 ジャニーズ事務所では先輩後輩だった嵐・二宮和也をはじめ、ノミネートされた優秀主演男優賞のメンバーが、その姿を優しい眼差しで見つめ、笑顔でレッドカーペットを歩く姿からも、満場一致の受賞だったと伺える。真の実力者の手にトロフィーが、ようやく渡ったのだと。

生き様という舞台で「人生を全うする」俳優

 そして、2つ目の理由は草なぎの信念が、この授賞式を通じて再確認されたためではないか。草なぎがジャニーズ事務所を離れ、稲垣吾郎、香取慎吾、そして彼らを応援するファンやスタッフたちをNAKAMAと称して、共に新しい地図を広げたのが、2017年のことだった。レギュラー番組は次々と最終回を迎え、地上波テレビで彼らの活躍を見ることはほとんどなくなり、その不自然な流れに「独禁法違反の可能性」が心配されたことも。

 「自分たちらしく」を求めて、模索を続けた日々。その姿は『ミッドナイトスワン』で演じた、自分なりの幸せをつかもうと必死に生きた凪沙と通じるものがある。ひとつも思い通りになんてならない世の中で、どうしたら自分の人生を生き抜くことができるのか。それは、この混乱の時代を生きる私たちにもリンクしているテーマだ。だからこそ、屈することなく、自分を信じて歩み続けてきた草なぎが、今回スポットライトを浴びたことに、多くの人が心を動かされたのではないだろうか。

 草なぎはスピーチで、稲垣や香取、NAKAMAの名前を出しながら、感謝の念を述べた。そして「一人ひとりの人生が、よりよく自由に全うできるような、そんな作品づくりと、人との関わりのなかで、これからも自分の人生を全うしていきたいと思います」と語った言葉に、多くの人が胸を掴まれた。

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