ピノキオピー特別対談①:DECO*27と語り合う“ボカロの過去・現在・未来”

ピノキオピー特別対談①:DECO*27と語り合う“ボカロの過去・現在・未来”

良い曲を聴くと悔しい気持ちが生まれる

ーー逆にお二人は最近、過去の楽曲をアップデートするような試みも行っていますよね。DECO*27さんは代表曲「二息歩行」をリメイクした「二息歩行 (Reloaded)」を2020年に発表して話題になりました。同じくピノキオピーさんも「ボーカロイドのうた」(2010年)のリメイク版となる「10年後のボーカロイドのうた」を2020年に発表、今回のベスト盤にも収録しています。

ピノキオピー:最初は普通に「ボーカロイドのうた」の音を作り直して収録するつもりだったんですけど、曲を作った2009年当時とはシーンの状況が様変わりしているので、ちゃんと今の世相や変化を反映したものにしようと思い歌詞も変えました。

ーーなかでも原曲では〈練りに練られたネタ曲も 日常を描いた曲も ちょっとエッチな曲も ボーカロイドのうた〉だったのが、〈売れ線の似ている曲も 踏み台の手段の曲も 人と共存する曲も ボーカロイドのうた〉になっていたのが印象的でした。ある種、棘も感じるフレーズと言いますか。

ピノキオピー:たしかにちょっと攻撃的ではありますけど(笑)。僕は“ボカロ踏み台論”(ボカロPが人気を得ていくと共に、ボーカロイドではなく自分自身で歌唱していく流れ)について否定はしていなくて、それも含めてボーカロイドだと思っていますし、はっきり言い切ったほうが楽になるとも思っていて。あと、歌詞の中に〈箱庭の音楽は力を失い〉という言葉があるんですけど、2009年当時はテレビよりもインターネットのほうが自由な音楽が多い時期だったので、「テレビのなかの音楽が力を失った」という意味で使っていたんです。でも今は逆で、ボカロシーンの音楽が逆輸入的にメディアに近づいていき力関係が変わった、というイメージで〈力を失い〉というニュアンスになっています。

ピノキオピー – 10年後のボーカロイドのうた feat. 初音ミク / The Vocaloid Songs 10 Years Later

ーーDECO*27さんは、以前に別の取材(※1)で、今後もリローデッドシリーズを続けていきたいとおっしゃっていましたが、その真意は?

DECO*27:リローデッドシリーズは基本的に二つの目的があリます。まず、僕の音楽を昔から聴いてくれている人に喜んでほしいというのが一つ。二つ目は、最近ボカロを聴き始めた若い人に向けて、昔のDECO*27にはこういう曲もあったということを知ってもらうため。さらにその二つの目的を合わせて、一つの曲を通して違う世代同士がコミュニケーションするきっかけになれたら、というのがある。要は架け橋的なものですよね。

ピノキオピー:僕のベスト盤も全く同じ目的で、過去の楽曲も聴いてほしいというのはあります。

DECO*27:たしかにベストアルバムはいい機会だよね。とある曲を目的に買ってみたら、昔の知らない曲を気に入ったり、逆に昔の曲を聴いていた人が新しい曲を知るきっかけになったりする。ピノさんの2009年からの流れを聴いてもらえる意味では、すごくいい作品だと思う。

ーーDisc3のリミックス集には今回、DECO*27さんとTeddyLoidさんが手がけた「すきなことだけでいいです – DECO*27 & TeddyLoid remix -」が収録されています。これはピノキオピーさんからオファーしたのですか?

ピノキオピー:はい。今回のリミックス集は<U/M/A/A>にいた人たちが全員集合というテーマもあるんですけど、この選曲には特に思い入れがありまして。「すきなことだけでいいです」(2016年)を投稿した直後に、DECOさんと仕事で福岡に行ったんですけど、そのときにDECOさんが「あの曲、聴いてほろりとしちゃったよ」「これは(ランキングの上位に)いくと思うよ」と言ってくれて。そしたらその後、本当にランキングで1位になったんですよ。純粋に屈託なく「ほろりときちゃったよ」と言ってくれたことがすごく嬉しかったし、その思い出も含めてこの曲のリミックスをお願いしました。

DECO*27:そうだったんだ! その話を聞いて、またほろりときそう。嬉しいなあ。僕はピノさんの曲を聴いてめちゃくちゃ良いと思ったときは、必ず連絡するか、会ったときに直接言うんですよ。

ピノキオピー:それを言ってくれた初めての曲が「すきなことだけでいいです」だった気がする。

ピノキオピー – すきなことだけでいいです feat. 初音ミク / All I Need are Things I Like

DECO*27:人が作ったものをストレートに褒めるのはあまり得意じゃないから。今は素直に言えるけど、やっぱり良い曲を聴くと悔しい気持ちが生まれるじゃない?

ピノキオピー:ある! 僕は悔しいから言えないもん(笑)。でも、お返しじゃないけど、DECOさんの「依存香炉」(2020年)もヤバいですよね。あれは本当にチャレンジの塊だから。DECOさんの最新アルバム(『アンデッドアリス』)は好きな曲がたくさんありますけど、「依存香炉」はまずスタンスが刺さりましたね。

DECO*27:ありがとうございます! あの曲に関しては、まずミクがラップするし、歌詞も僕が普段使わない名詞が結構入ってる。MVもイラストを使わず歌詞だけにしていて。

ピノキオピー:リリックビデオですよね、海外のラッパーのMVみたいだなと思って。

DECO*27:そうそう、言葉だけでごり押ししていくっていう。

DECO*27 – 依存香炉 feat. 初音ミク

ーー『アンデッドアリス』には「ネオネオン」などEDMの要素を取り入れた楽曲も収録されていて、DECO*27さんは今回のリミックスを含め、最近はクラブミュージック寄りの楽曲にも取り組んでいますよね。その意味では、ピノキオピーさんの近年のアプローチにも近いのかなと思って。

ピノキオピー:僕はルーツとして電気グルーヴやエレクトロニカ好きというのがあるので。最初の頃はパンクロックも好きだったからパワーコードで曲を作っていたのですが、2014〜2015年頃にそのやり方は先がないなと感じて、打ち込みの方を頑張り始めたんです。最近は音数を少なくするアプローチがとても気に入ってます。音を削ぎ落しながらも、ビビッドなものを入れるバランス感が好きですね。

DECO*27:僕は自分のイメージが固まってしまうのがめちゃくちゃ怖くて。例えばロックな曲ばかり書き続けていたら、みんなが飽きてしまうかもしれない。だから、やるにしてもいろんなジャンルの曲を挿みながら公開していくことで、どれもDECO*27っぽく見せつつ、新鮮に感じてもらえるようにしたいと思っています。

ピノキオピー:常に新鮮なことをしたいのが、僕らの共通点ですよね。動画のサムネイルにしても、毎回前作とは雰囲気をガラッと変えたりして。違う印象のものを与え続けたいというのは二人ともあると思っています。自分に飽きたくないんですよね。

DECO*27:そう、自分の書く曲にワクワクしたい。「自分はこんな曲も書けるんだ!」とか「まだ引き出しがあった!」とか。

ピノキオピー:新しい引き出しが開いた喜びみたいなものは、絶対に一個は入れたい。

(※1)https://www.lisani.jp/0000161346/

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