相川奏多、楠木ともり、斉藤朱夏、矢野妃菜喜……野島伸司脚本『ワンダーエッグ・プライオリティ』の世界で戦う女性声優たち
そしてボーイッシュな少女、沢木桃恵を、私立恵比寿中学の元メンバーで『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の高咲侑でも知られる、矢野妃菜喜が演じている。見た目と穏やかな優しい口調が特徴の桃恵だが、中身は悩み多き少女であり、そのアンバランスな役どころを矢野は巧みに熱演。自分の殻を破ろうとする桃恵に、渾身の演技で挑んでいる。
また相川ら4人は、音楽ユニットのアネモネリアとして同アニメのオープニングテーマ「巣立ちの歌」とエンディングテーマ「Life is サイダー」を歌っている。「巣立ちの歌」は1990年まで小中学校の卒業式でよく歌われた合唱曲のカバー。野島作品と主題歌の関係性として、かつてはドラマ『高校教師』で森田童子「ぼくたちの失敗」を起用したように、「巣立ちの歌」もアニソンらしからぬ神聖さで他のアニメにはない空気感を与えている。
14歳の少女たちが自分の心とどう向き合い、どう問題を解決していくのか。野島節とも言える行間を読むようなナイーブさのあるセリフとそれを彩る音楽、そして4人の瑞々しい声と演技。それらがセットになることで『ワンダーエッグ・プライオリティ』は、アニメの枠を越えた表現作品として成立している。
■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。