田所あずさ、『Waver』に刻んだアーティストとしての新たな幕開け 本質を見出したセルフプロデュース作

田所あずさ、『Waver』に刻んだアーティストとしての新たな幕開け 本質を見出したセルフプロデュース作

 人気アニメ『アイカツ!』や『BanG Dream!』『半妖の夜叉姫』でお馴染みの声優アーティスト・田所あずさが、前作『So What?』から実に3年3カ月振りとなる通算4枚目のアルバム『Waver』をリリースした。本作は、アルバムのタイトルともなっている“Waver”=“ゆらぐ、ゆらぎ”をテーマにした新曲10曲を収録した、初のセルフプロデュースアルバムとなっている。繰り返しになるが、本作には大きく分けて3つのトピックがある。1つ目は、「全て新曲である」こと。2つ目は、「コンセプチュアルな作品になっている」こと。3つ目は、1と2の出発点でもある「初めてセルフプロデュースでアルバムを制作した」ことである。

 1つずつ、整理したい。ニューアルバムには、3rdアルバム『So What?』を発表した以降にリリースした5枚のシングル曲が1曲も入っていない。クロエ役で出演したアニメ『転生したらスライムだった件』のED主題歌で、MVの総再生回数が200万回を突破している8thシングル「リトルソルジャー」も入っていないし、主人公リョウマを演じたアニメ『神たちに拾われた男』のOPテーマで、昨年の11月11日にリリースされた11thシングル「ヤサシイセカイ」も未収録。シングル曲を入れないという決断は、それぞれのアニメ作品のファンもいることも考えるとリスキーにも映るが、それだけアルバムとしてのコンセプトを大事にしたということだろう。

 アルバム全体のコンセプトは、1月13日から4週にわたってYouTubeのLantis Channelで公開されていた「Waverリリース記念 スペシャルラジオ鼎談」で、「自分のことをネガティブで自信がないと思ってきて。でも、今回、ずっと悩み続けてやってきたことが間違いじゃなかったんだって気づいたんですよね。今のまま、このまま、揺らぎ続けながら作品にしていきたいと思った」と語っていたように、“揺らぎ”である。“揺らいでいる”というと、一見とても不安定そうに感じるかもしれないが、“変わり続けていくこと”と言い換えたらどうだろうか。“新しい生活様式”や“ニューノーマル”の実践が推奨されている現代とも通じるテーマでもあるが、本作に収録された新曲は、アーティストとしての田所あずさの本質とは、“揺らいでいくこと”=“変わり続けていくこと”であるという宣言に至るための10曲となっているのだ。

 出発点に戻ると、これまで制作を共にしてきた音楽プロデューサーが彼女の現場を離れ、「これまでの自分のことや自分の好きな音楽を知ってる人が自分しかいなくなった」ことで、セルフプロデュースを思い立ったという。そこで、彼女はまず、前述のアルバムコンセプトを考えた上で、作詞家の大木貢祐とサウンドプロデューサーの神田ジョンと細かく打ち合わせを行い、全10曲、それぞれの楽曲のコンセプトやイメージを書き出し、共有した上で制作を進めていったという。

 オープニングナンバー「レイドバック・ガール」のテーマは、「新しい挑戦」。これまでのロックなころあずをイメージしてる方はきっと驚くだろう。妖艶な吐息も混じった歌謡ジャズ〜スイングエレクトロとなっており、歌詞では「世の中が良しとする在り方に抵抗して、自分勝手に進化したモンスター」の怒りが表出している。ダイナミックなクラシックピアノが目の前の日常を忘れるくらいの没入感をもたらせてくれる「ちっちゃな怪獣」では、「一つのことしかできない人の苦悩と葛藤」を描き、アコギのリフを基調にしたポップなブレイクビーツ「ソールに花びら」ではシュールで毒のあるユーモアをウィスパーボイスで表現。ハートウォーミングなサウンドだが、メロディもリズムも揺らいでいる「Rest in a Stroke」は、ころあずにとっての「ひだまり」がテーマ。〈わたしのほんとうを伝えるから〉というフレーズからは、本作を通したファンとの繋がりを求めているように感じ、実兄の結婚式に出席した際に感じた違和感から生まれた「クリシェ」(常套句の意味)では、神様の前で愛を誓い合った瞬間に夫婦になる=他人から家族になるという変化に対する“君の決意”が込められている。そして、MOSHIMOの岩淵紗貴と一瀬貴之が作曲した同世代の女子による赤裸々なラブソング「死神とロマンス」「徒然恋愛サバイバー」で、恋する心だけじゃなく、音楽で身体も揺らし、いよいよ終盤へと突入していく。

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