神谷浩史、井上和彦、堀江一眞……『夏目友人帳』の世界に命を吹き込み続ける声優たち
先にも登場した夏目の友人、田沼要を演じる堀江一眞も『夏目友人帳』を語る上で欠かすことのできない声優の一人だ。一時期はランティス初のオリジナルアニメーション『グラール騎士団』にて梶裕貴らと音楽ユニット・G.Addictとして活動していたほか、昨年3月には自身名義のYouTubeチャンネルを開設するなど、何か一つに縛られることなく自由なスタイルで活動している。
堀江演じる田沼は、夏目が妖を見ることができることを認知している数少ない友人であり、理解者でもある。さらに田沼自身もわずかながら妖力を持っており、その姿形を認識することはできないが気配を感覚的に察知することができる。『怪しき来訪者』は、この田沼を中心とした短編で、彼とある存在の交流を介して物語が展開していく。
夏目の理解者であり続けたいと思う田沼を、堀江はその気持ちを純粋に伝えるよう演じている。同シリーズでは一貫してそのような立ち位置である田沼だが、『怪しき来訪者』ではあえて本心を隠すような素振りを見せる。堀江も、これまで同様にごく普通に田沼を演じてはいるが、端々に秘密を抱えているニュアンスをはらませ、ストーリーの核心に迫るシーンでも、常に田沼であり続けるように努めていたのが印象的であった。
『夏目友人帳』は、現実逃避を目的としたファンタジーではない。登場する妖たちはどこか人と通ずる部分を持ち、人もまた、妖のような存在であるのだと改めさせられる。ここで紹介した声優たちは、それらをささやかに表現し、この先も『夏目友人帳』の世界で生きる人や妖に命を吹き込み続けていく。