えぬ、共感性の高いラブソング「想無」がバイラルチャート好調 SNS発の新たなヒットシンガーになるか
アコースティックギターのアルペジオから始まり、全体を通して少しノイジーなサウンドでホームメイドな雰囲気が漂う人懐っこい印象。そして、恋人を想う夜をテーマにした歌詞をそっと歌い上げる優しくも切ない歌声は、楽曲の説得力をグッと高めてくれる。〈また眠れないなって 携帯開いた深夜の2時/こんな夜 いつまで 続くんだろう〉というラインに象徴されるように、ベッドルームにスマートフォンのバックライトだけが浮かび上がる、そんな寂寞とした光景が脳裏に浮かぶ。
テーマは定番の恋愛ソングなわけだが、本楽曲が特別に人気を集めている要因のひとつは、自己投影のしやすさにあるのではないだろうか。YouTubeで公開されているMVのコメントを見てみると、歌詞への共感の声が非常に多いことがわかる。歌詞のリアリティに加えて、えぬの飾り気のない歌声が「想無」の世界観を身近なものにしているのかもしれない。
チャートの成績に着目すると、4位から3位へ着実にランクアップした1月最終週。人気に火がついて間もない段階にあるとはいえ、多くの共感を集める楽曲を武器に、えぬの人気はこれからもっと高まるだろう。瑛人「香水」やYOASOBI「夜に駆ける」のように、お茶の間で「想無」を耳にする日も近いかもしれない。
■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
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