瑛人、「僕はバカ」などから掘り下げるアーティストとしての真価 “仲間”との巡り合いが示す、さらなる成長への可能性

瑛人「僕はバカ」などから掘り下げる真価

 瑛人の1stアルバム『すっからかん』が素晴らしい。

 何がいいかと言えば、そこに“仲間”がちゃんといることが伝わってくることだと思う。「香水」だけではわからない彼の魅力がそこにある。曲が先に“現象”として世の中に大きく広まったがゆえに、瑛人のシンガーソングライターとしての実像はまだまだ伝わっていなかった。彼がどういう才能の持ち主なのか、そのあたりのことはまだ明らかになっていなかったのだ。

 だが、アルバムを聴くとわかることが沢山ある。それは、瑛人の音楽がいわば“コミュニティミュージック”であるということ。彼は一人ですべてのクリエイティブを作り上げるような天賦の才に恵まれたミュージシャンというわけではない。『情熱大陸』(TBS系)に登場したときにも、自らを“ポンコツ”と称し、ギターも苦手で譜面も読めないことを明かしていた。そのかわり、人を惹きつける不思議な懐の深さがある。およそ半年にわたって彼に密着した番組でも、相棒であるギタリストでシンガーソングライターの小野寺淳之介をはじめ、彼の周囲には色々な“仲間”が集まり、一世を風靡し状況が大きく変わる中でも、彼自身を支え、前に進めてきた道程が映し出されていた。

 そういう瑛人というアーティストの真価を象徴するのが、アルバムの1曲目に収録された「僕はバカ」だ。

 サウンドプロデュースをつとめたのは、origami PRODUCTIONS所属のギタリスト/コンポーザー/プロデューサー、関口シンゴ。ふくよかな鳴りのアコースティックギターを軸にしたアレンジ、ゆったりとした包容力を感じさせる温かみに満ちた曲調は、おおらかで飾らない瑛人自身の人柄にも通じるものを感じさせる。曲のテーマは「妄想のラブソング」。隣の部屋に可愛い女の子がいたらーーという願望を歌った曲だ。〈わかるでしょ 僕はバカ〉という歌詞が憎めなくて耳に残る。

瑛人 / 僕はバカ (Official Music Video)

 関口シンゴは「またね feat.松本千夏」と「ハピネス」でもサウンドプロデュースを担当し、アルバム全体のトーンを決定づける仕事をしている。また、同じくorigami PRODUCTIONS所属のmabanuaが「Don't be afraid feat. HOTDOGS」を、Michael Kanekoが「好きにすればいいさ」のサウンドプロデュースを担当。「香水」でのアコースティックギター1本のシンプルな曲調の印象が強い瑛人だが、これらの曲を聴くと、清水翔太と平井大をルーツにあげる瑛人が、ジャワイアンレゲエ、ソウル、R&Bなど幅広いジャンルの音楽性を表現するシンガーであることも伝わってくる。

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