THE BACK HORN×9mm Parabellum Bullet、凄まじいばかりの熱量 セッションも交えて届けたARABAKIへの思い
ここからは4人編成の混成バンドの演奏へ。まずはTHE BACK HORNの菅波、松田、9mmの菅原、中村による“黒組”。松田が背後に掲げられたバックドロップ(ARABAKIの鰰ステージのバックドロップを持ち込んだのだという)を紹介し、「ARABAKIへの思いが、人見記念講堂まで届いてる感じがする」(松田)、「配信できたことで、東北だとか、関西より西の人、“東京だと観れない”という人にも見てもらえたのはよかった」(菅原)と語り合う。そして「卓郎の声、本当にいいよね」(菅波)「そんなに褒めたら、ボタン一つ外すよ(笑)」(菅原)という菅・菅コンビの微笑ましいトークを挟み、9mmの「Vampiregirl」へ。切れ味鋭いギターリフ、シャープなビートが響き合うアッパーチューンだが、菅波、松田が演奏することで野性的な生命力が加わる。前日の配信ライブで「マツが叩くとこうなるのか!」というコメントが寄せられていたが、プレイヤーのセンスや癖によって、楽曲の雰囲気が大きく変化していたのだ。菅原が歌う「罠」(THE BACK HORN)も絶品。危うさ、妖しさを含んだメロディと菅原の声質の相性はまさに抜群だった。 “白組”は9mmの滝、かみじょうちひろ(Dr)、THE BACK HORNの山田、岡峰。黒組と違って無口なメンバーが揃い(特に滝、かみじょうはまったく喋らない)、「今日は大寒らしいですよ」(山田)とのどかな雰囲気が漂っていたのだが、そんなムードはもちろん、演奏が始まった瞬間に吹き飛んでしまう。1曲目は9mmの「The Revolutionary」。〈長い夜が明けた革命の次の日〉という歌詞の世界観と山田の強靭な歌声ががっしりと符合し、オーディエンスのテンションをさらに引き上げる。山田と滝がギターソロをハモる場面もめちゃくちゃ貴重だ。「戦う君よ」(THE BACK HORN)では、かみじょうの鋭いビート、滝のエッジーなギターソロが炸裂。この曲でも「この二人が演奏すると、こうなるのか」というケミストリーを体感することができた。
確固たるオリジナリティを備えた2つのバンドが、メンバーを混ぜて演奏することで、斬新で刺激的なロックミュージックを生み出す。それを可能にしているのはもちろん、THE BACK HORNと9mm Parabellum Bulletの音楽的な相性の良さだ。 デビューはTHE BACK HORNが2001年、9mmが2007年。THE BACK HORNはグランジ、ロカビリーなど、9㎜はヘビィメタル、エモなどをルーツに持つバンドだが、“海外の音楽を血肉化したうえで、日本のバンドとして何を表現すべきか”というテーマを追求する姿勢は、完全に一致していると言っていいだろう。19日の公演で菅原は「音楽的に親戚みたいな感じ」とコメントしていたが、この言葉通り、日本的な音階を取り入れたメロディ、日本語の奥深さを感じさせる歌詞など、両バンドにはDNAレベルのつながりがあると思う。
最後は再び8人揃って「刃」(THE BACK HORN)、「Black Market Blues」(9mm)を披露。9mmのメタリックな音像、THE BACK HORNのエモーショナルな熱量が反響し、この日、この場所にしか生まれない高揚感が出現。「どうもありがとう。元気でね。また生きて会おうぜ」(山田)という言葉とともにライブは終了した。 MCでは「今年のARABAKI、開催されることを願ってます」(山田)「(コロナウイルスの状況は)行きつ戻りつだろうけど、こうやって楽しめる場所をまた作れたらいいなと思ってます」(菅原)という言葉も。シーンを代表するライブバンドである両者のセッションを生で体感し、思い切り叫び、踊りまくりたい。そんな欲望を与えてくれたこともまた、このライブの収穫だったと思う。