東方神起、一挙フル公開した25作品のMVから辿る歩み ユンホとチャンミンが守り、築き上げてきたものの尊さ
“大人“東方神起の覚醒と、近づく別れを予感させる2014〜2015年作品
「Something」「Sweat」「Spinning」と、2014年のMVは大人の色香でクラクラするダンディな作品が揃う。「Something」では美女たちとの絡みが艶かしく、「Sweat」ではクラブに出入りするハマったらちょっぴりヤバそうな男たちに扮する。この時期、2人とも前髪が長く、かき上げる仕草も振りのひとつのように感じさせるほど色っぽい。また「Spinning」では、玉座に腰掛ける王のように堂々と振る舞い、K-POPのレジェンドクラスに到達した貫禄を感じさせるのだ。
最初は小さな芽だった東方神起が、冷たい雨や厳しい強風に耐え、今では大きな木になった……そう思わせてくれるのが「TREE OF LIFE」だ。キラキラとしたMVからは、辛いことがあったとしても、やがて実を結ぶ日は必ずくるということを思わせてくれる。それは2人が人生をかけて見せてくれたもの。晴れ晴れとした表情は、人生のネガティブなものを包み込み、浄化していくような力さえあるように思えてくる。
スターとして影響力を持った人には共通して、ある役割が与えられるような気がする。それは、より良い世界になるようにと願い、その希望とも呼べる想いを広めていくこと。その役割が、彼らの手に回ってきたのだと、背中合わせで愛を歌う「Time Works Wonders」のMVを見ながら実感する。
そんななか発表されたのが「Chandelier」。ウィンターシーズンの東方神起は、やはり白いニットがよく似合う。そして、〈きっと 遠くにいても 迷わないだろう「おかえり」の声を聞くまで〉と歌う声は、これまで以上に2人のビブラートが美しく耳に残る。ユンホの潤んだ瞳から、近づいてきた別れを彷彿とさせた。それは2年間の兵役というしばしの別れ。
そして兵役直前の「サクラミチ」では、東方神起の大樹に桜の花が咲き、〈きっと大丈夫 離れたとしても きっと大丈夫 ずっと繋がっている〉と歌う2人。生きていれば誰にも訪れる別れに寄り添ってくれる歌。そして、これから離れ離れになるファンに語りかけている歌でもある。ユンホとチャンミンが見つめ合いながら、お互いを励まし合っているようにも見えた。
東方神起と切ないバラードの相性がいいのは、きっと心の琴線に触れるチャンミンの表情豊かな歌声と、ユンホが愛情深い繊細な心で歌詞を届けようとする表現力の相乗効果。歌の中だけではなく、現実の別れとリンクした「サクラミチ」はより一層エモーショナルなMVに仕上がっている。
度肝を抜いた再始動、そして自らを更新し続ける円熟期へ
2017年、東方神起は兵役を終えて「Reboot」でカムバックを果たす。疾走感のあるメロディにキレキレのダンスは、2年のブランク中にむしろパワーアップしたとさえ思わせる見事な再始動で圧倒してくれた。ユンホのラップはカリスマ性を高め、チャンミンの歌に合わせた手振りもより大人っぽくセクシーになっているのを感じる。2人が東方神起として培ってきた、ダンス曲の魅力を全て凝縮したかのようなMVは、当時の最新作にして最高傑作とも言える名作だ。
そして、2006年に日本6thシングルとして発売していた「Begin」を、2人で歌い直し「Begin ~Again Version~」としてMVを制作。レコーディング風景のようなナチュラルな出で立ちで、バンド、ストリングスに囲まれたマイクの前に立つ2人。見つめ合いながら、思い出の曲を噛みしめるように歌う姿に、彼らが何を思うのか。
さらに、2006年日本4thシングルの「明日は来るから」も「明日は来るから ~TOMORROW Version~」として新たなMVに。これが今回公開された再生リストのラスト、25作品目となる。木々が並ぶ道や街の中を歩きながら歌う2人の肩の力が抜けた表情に、心が解けるようだ。そして白い衣装で立つヘリポートは、5人時代のMVで見た光景と交錯する。あの頃と地続きの夢を見ている、ということだろうか。〈はるかな〉とユンホが伸びやかに歌い上げる姿に胸が熱くなる。
2人が守った“東方神起“は、過去を振り返ることも未来を見据えることもできる場所。壮大な世界観を表現する楽曲も、飾らない姿で歌う楽曲も成立する場所。そして、どんなに離れていても「ただいま」と言って戻ってこられる場所になった。25作品のMVを通じて、彼らの成長はもちろんのこと、築き上げてきたものの尊さを感じることができた。
そして今、私たちは予期せぬタイミングで東方神起と会えない日々を過ごしている。それは、兵役のときのように期限が見えない。だが、MVを振り返ればこの試練もきっと乗り越えられるはずだと思えてくる。そして、この会えない日々の間に必ず、東方神起はパワーアップして私たちの度肝を抜くステージを届けてくれると信じている。だから今は、このMVたちを愛でながら、その日が来ることを楽しみに待ちたい。