佐藤結衣の「K-POPメンバー図鑑」Vol.2
東方神起 チャンミンが元祖にして最強の“マンネ”である理由 努力で手にした歌声と失われぬ親しみやすさ
最強マンネ――。
“マンネ(막내)“とは、韓国語で“末っ子“を意味する単語だ。最近では、K-POPグループの中で、最年少のメンバーを指す言葉としてすっかり定着し、各グループに愛されマンネが存在する。そんな多くの愛されるマンネの中で、元祖“マンネ“は誰かとたずねられたら「東方神起のチャンミン」と答える人は少なくないだろう。それも「最強のマンネ」と。なぜ、チャンミンが、元祖にして最強の“マンネ“と呼ばれるのか。
無言実行のシンデレラボーイ
チャンミンが芸能界入りするきっかけとなったのはスカウトだった。中学生のころ、広場でバドミントンをしていたところに、声をかけられたという。厳格な父親のもとで、品行方正な優等生として育てられたチャンミン。芸能には全く興味がなかったが、明るい性格の母親に手を取られ芸能事務所の門を叩くことに。
ダンスも歌も未経験。ダンスオーディションでは、リズムに合わせて手を打つことしかできなかったというから、まさに生まれ持った容姿の美しさで、大きなチャンスを得たことになる。当然ながら周囲から嫉妬の眼差しが降り注ぐ。それは、強い覚悟を持って家出同然で練習生となり、血のにじむような努力を続けていたユンホも同じだった。「適当にやるつもりなら出て行け」と厳しい言葉をかけたこともあったそうだ。
そんな苦しい状況を打破したのは、他ならぬチャンミンの努力だった。東方神起に抜擢された後も、休暇を返上してボーカルレッスンを受けていたのは有名な話。伸びやかなハイトーンボイス、どこか懐かしさを感じるこぶしのきいたビブラート。テクニックだけではなく、感情を込めて、感動できる歌を歌いたい、と語っていた少年は、自在に歌声を操るボーカリストへと成長していった。
ライブでは、大好きなX JAPANの「Rusty Nail」「Forever Love」のカバーを披露したことも。最近の楽曲では「こんな声も出るの?」と、まだまだ新たな発見をくれる。何も持っていなかったシンデレラボーイは今、手に入れたテクニックを超えて、心から歌を楽しんでいるようにも見える。
現在も、そのストイックなライフスタイルは変わらない。2018年に放送された韓国の人気バラエティ番組『私は一人で暮らす』(MBC)では、料理、ギター、筋トレ、日本語学習と勉強熱心な姿が映し出される。もしかしたら、初対面で見せたユンホの厳しい姿勢が、チャンミンを美しさと勤勉さを兼ね備えた逸材に育てたのかもしれない。あるいは、そんなチャンミンの姿勢の心地よいプレッシャーが、ユンホをさらなる努力家にしたのかもしれない。「負けてられない」と周囲にいい刺激をもたらせるところも、“マンネ“力の高さだ。
無自覚な可愛げと頑固さ
生まれながらの美貌に、努力の末に手に入れた唯一無二の歌声。知的好奇心で、Instagramでは度々読書家の顔も見せる。そんな絶え間ないインプットの結果、最近ではダンスにもより一層表現力が加わった印象のチャンミン。だからといって、親しみやすさが失われてしまうかといえば、そうではないのが“最強マンネ“たる所以。
特に「かわいい」と言われると、キレキレの毒舌が飛び出すのは微笑ましい限り。5人で活動していた時期には、ジェジュンから赤ちゃんをかわいがるようにキスされた話が出ると、「そういう気持ちはですね。行動では表現しないでください」とピシャリ。今も、コンサートでチャンミンの可愛らしい言動を目撃したファンが沸くと「やめてください。何が『最高』ですか。座ってください!」と、チャンミン節が炸裂する。
そのビジュアルに加えて、本人は無自覚な可愛げが、メンバーやファンの心を魅了してやまない。どれだけ無自覚かといえば、MC中にホコリが目の前を舞ったようで、猫のようにすばやく手で払いながら「ホイッ」と口に出してしまい、ファンの喜ぶ姿にキョトンとしていたほど。だが、その可愛げをチャンミン自身は、かっこよさに塗り替えようとする。その頑なさも、またマンネ味を強める一方なのだ。