木下百花、危うくて天真爛漫な“人を惹きつける魅力” 渋谷WWWワンマンライブでの姿を見て

木下百花、危うくて天真爛漫な魅力

 NMB時代から自己プロデュース能力に長けていた彼女のこと、「今回はストレンジな異端児キャラクターを封印して、バンドサウンドで自分の内面を吐露した」と見ることもできますが、手法が変わっただけで、自分自身を客観視した自己演出の一つであることに変わりはありません。彼女は洋服のリメイクもよく行っているそうですが、既製服にハサミを入れたり絵の具でペイントすることは、完成形のイメージが見えていないとできません。ライブでの衣装も全て、「楽曲の世界観」を中心とした、その曲に最も似合う姿を選び取っているように見えました。

 ステージを降りた彼女は小さくて細くて向こう側が透けそうに真っ白で、どこか所在なさげで、本当にさっきまであのエネルギッシュなステージを繰り広げていた人と同一人物かとギャップに驚き、北島マヤ(『ガラスの仮面』/美内すずえ)が舞台が終わった途端、“普通の女の子”になる様子を思い出しました。ただ、ギラギラと輝く瞳だけはステージ上とずっと変わらずそこに在りました。

 自分に何が似合うのかは、自身を客観視できていなければわかりません。イエローベース/ブルーベースのパーソナルカラー診断のように、何かの物差しに頼らなければ、似合うものを選び取ることは難しい。他人から「似合わない」と否定されてしまうことも怖い。百花さんは、自分に最も似合うものを鮮やかにチョイスし、他人からどう言われようとしたい格好をして、客観的な自己演出を実現しているからこそカッコイイ。アイドルを卒業してからもずっと一貫している才能です。ミーハーな私はまず、見た目の美しさ・可愛さ・華やかさに飛びつきましたが、彼女が人を惹きつけているのはその一貫性にあるのだと気づきました。

 SNSで他者の反応に翻弄され、本当に好きな物もわからず不安な今の時代だからこそ、彼女の確固たる一貫したカッコよさに憧れ、その存在そのものに勇気づけられます。あんなにもピュアな才能が、好きな音楽を奏でている姿。それだけで、この世界もそんなに悪くないと思えるのです。

木下百花 『5秒待ち』ミュージックビデオ

■松村早希子
1982年東京生まれ東京育ち。この世のすべての美女が大好き。

出典
*1  skream!インタビュー
*2「FREECELL 特別号30」(KADOKAWA MOOK)より

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