松村早希子の「美女を浴びたい」
木下百花、危うくて天真爛漫な“人を惹きつける魅力” 渋谷WWWワンマンライブでの姿を見て
『アウト×デラックス』(フジテレビ系)で初めてお姿を拝見した、髪を刈り上げたりタトゥーを入れたりのド派手なビジュアルと、大人への反抗を剥き出しにした破天荒な言動から、常に異端児と呼ばれてきたという木下百花さん。
喉元の真正面に彫られたタトゥー以上に強く心に刺さったのは、くっきりと大きく輝く瞳。自分の目でそれを確かめたくて、12月27日渋谷WWWのワンマンライブへ行ってきました。
「すっごい好き」だから名前を出したくない(*1)と彼女が語る踊ってばかりの国やゆらゆら帝国のようなオルタナを想像していたら、意表を付くオシャレなドリームポップのSE。客電が落ちた瞬間に流れた松田聖子「SWEET MEMORIES」のイントロで騒めく会場。聖子ちゃんのスイートボイスと共に、バンドメンバーと百花さんが登場。黒尽くめのバンドに一人、ブルーグレーのチェック柄パジャマにギターを抱えた金髪のエンジェル。
まず、その声。バンドサウンドの迫力に負けない声量、くっきりと立ちパーンと通る、疾走感溢れる発声。ティンカーベルのように小さくて華奢な体の、どこからあの声が出てくるのかと驚きました。
着倒したリアル寝巻き感のあるパジャマ姿は、ずっと引きこもっていた子が、どうしようもなく追い詰められて家を飛び出した危うい瞬間を見てしまったかのよう。JKブランド文化を皮肉る「卍JK卍」では、ミニ丈スカートにルーズソックスの女子高生スタイルに、MVに登場するパンダや親友のみほちゃんとニコニコ踊って、煽られているのに寧ろ可愛いという倒錯的感情を抑えられません。
「ダンスナンバー」MVでのカラフルにペイントされたレースとフリルいっぱいの衣装。ギリギリきわきわの所を攻めて奇抜で面白く且つオシャレに着こなすセンスに脱帽。東京事変を手がける飯島久美子さんのスタイリングを思い出しました。
ギターを置いての「ダンスナンバー」では、彼女が大好きだという動物園の生き物たち、ネコ科もイヌ科も爬虫類も魚類も鳥類もみんなが、一人の肉体に大集合したかのような、自由で心地良いダンス。
何度も「楽しい!」と繰り返し、「ビッグラブ!」を連発する百花さん。幼ない子供のようにピョンピョン跳ねて、音楽に浸る喜びを全身で表す姿に、“捻くれた異端児”という固定観念は音を立てて崩れました。最悪だった2020年が終わろうとしている年の瀬、ライブハウスで体感するライブの楽しさをハッキリ思い出させてくれた日でした。思い切り声を出したり暴れ回ったりはできないけれど、ステージ上の彼女が音楽を楽しみ尽くす様子を見ていたら、こちらもただ楽しくて、いろいろな不安や辛さが吹き飛んでスカッとしていました。
百花さんのことをもっと知りたくなり、長年のNMB48ファンに話を聞くと、彼女のパブリックイメージとは別の顔が見えてきました。
NMB48のテレビ仕事が非常に多く1期生のほとんどがNMB劇場にいなかった時期に、ずっと劇場に出続け、後輩みんなが彼女を慕っていたこと。マス向けのNMBのイメージを作ったのは山本彩さんと渡辺美優紀さんの二人だけれど、NMBの奥行きを作ったのは百花さんであること。NMB単独公演では毎回自身がプロデュースする「百合劇場」があり、ソロ曲「プライオリティー」では活き活きした男装ホスト「皇輝音翔」を演じたり。味園ユニヴァースでの完全自己企画演出・卒業直前公演(『木下百花・更生施設 祝!出所イベント』)は、松浦亜弥「ドッキドキ!LOVEメール」から始まり戸川純「好き好き大好き」、清竜人「痛いよ」、THE YELLOW MONKEY「LOVE LOVE SHOW」や岡村靖幸、椎名林檎に中島みゆきを経由して山口百恵「さよならの向う側」で終えるカバー選曲、実姉と「千本桜」、母親とは「DESIRE」を踊り、アイドル史と自分史を重ね合わせたとんでもなくヤバいステージを作り上げていました。(*1)