SugLawd Familiar、2020年末のバイラルチャートで急上昇 クラシカルなビートと強烈なフックで聴き手を虜にするクルー
「Longiness」のリリックに目を向けてみよう。〈リーズナブルな完成度+スケスケまくりのimitation/あいつになりたくてもがいても/底なし沼のように沈んでくよ〉というフックは、思わず口ずさんでしまうような秀逸なパンチライン。誰の真似でもない自分たちのスタイルでクオリティの高い作品をドロップしていく心意気が声高に宣言されている。このフックの血気盛んなメッセージを裏付けるのが、OHZKEYとVanity.Kの個性的でスキルフルなラップ。フック部分を間に挟んでOHZKEYとVanity.Kのパートが分かれる構成になっている本楽曲は、2人の異なるスタイルを効果的に映し出している。OHZKEYの抑揚のあるフローがリリックの世界観にリスナーを誘い、Vanity.Kのアグレッシブなライミングで圧倒する。約3分のうちに、強烈なパンチラインをもつフックと2MCのキャラクターが鮮明に提示される構造は簡にして要を得ていて素晴らしい。1曲あたりの長さが短くなる傾向の現在のトレンドでは、短時間のうちに強烈なフックだけで押し切ってしまうスタイルが散見されるなか、重層的な構成でありながら短時間でリスナーの耳をひきつけるクレバーさには驚かされる。
OHZKEYの〈俺ら発展途上でもかっけえぞ〉というリリックが示すとおり、SugLawd Familiarはまだ発展途上であるものの、ガウディによる未完の世界遺産「サグラダ・ファミリア」のように未完成の段階ですでに異彩を放ち、その完成に向けた過程さえもが人々の心を掴む特別な力を秘めているようだ。
■Z11
1990年生まれ、東京/清澄白河在住の音楽ライター。
一般企業に勤務しながら執筆活動中。音楽だけにとどまらず映画、書籍、アートなどカルチャー全般についてTwitterで発信。ブリの照り焼きを作らせたら右に出る者はいない。
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