モーニング娘。'20「KOKORO&KARADA」で首位獲得 伊勢鈴蘭らYouTube動画も目立った『2020年度ハロプロ楽曲大賞』
ハロプロを愛する者たちの間で毎年恒例のファンイベントとなっているのが「ハロプロ楽曲大賞」。インターネット上で投票を募り、1年間に発表された楽曲に順位を付けてみんなで楽しく盛り上がろうという趣旨の催しである。昨年末も「第19回ハロプロ楽曲大賞'20」と銘打って開催され、2446人が投票参加して大きな盛り上がりを見せた。
(総順位などの結果は公式サイトをご覧ください。)
リアルサウンドでは毎回順位に関する分析記事を寄稿しているが、今回もまた2020年版記事をここにお送りする。それでは早速順位を振り返っていこう。
(以下の論考は、本ランキングとあせてお読みください。)
楽曲部門1位:モーニング娘。'20「KOKORO&KARADA」
2020年度の第1位に輝いた楽曲は、モーニング娘。'20「KOKORO&KARADA」。曲自体は2019年の秋ツアー『モーニング娘。'19コンサートツアー秋 ~KOKORO&KARADA~』初日の9月21日にライブ新曲として初披露されており、その後2020年1月22日にシングルリリースされた。ツアータイトルと同名曲だが、これは作詞作曲者のつんく♂が提出した楽曲に対して、アップフロントプロモーションの西口猛社長が「ぜひこの曲を今度のツアーの軸にさせてほしい」という申し出があったため、という逸話がある。
編曲の大久保薫とつんく♂のタッグによる、2012年のシングル曲「One・Two・Three」以降のEDM路線の系譜であると同時に、2014年シングル曲「時空を超え 宇宙を超え」あたりから芽生えた、ストリングスを配したロマンティックかつ壮大な曲調。そういった流れをブラッシュアップしていった果てに現れた、非常に洗練された一曲。完成度の高さが並外れている。それは、メンバーの卒業/加入をくり返して進化していくモーニング娘。において、主要メンバーに大きな変動がない昨今、熟練の域に達したメンバーのパフォーマンス度の高さも関係しているだろう。
つんく♂提供曲が楽曲大賞で1位に輝いたのは、2017年のモーニング娘。'17「ジェラシー ジェラシー」以来、3年ぶりとなる。
楽曲部門2~3位:
Juice=Juice「ポップミュージック」/BEYOOOOONDS「ビタミンME」
楽曲部門第2位は、Juice=Juice「ポップミュージック」。ハロプロ各グループと同じアップフロント所属の先輩ミュージシャン・KANが作詞作曲。2020年2月26日にKAN版シングル、同年4月1日にJ=J版シングルがリリースされたので、形式上は「KANのオリジナル曲をJ=Jがカバーした」ということになるのだが、リリース日は約1カ月しか空いてなく、制作時期はほぼ一緒だろうから、競作と考えることもできる。
歌詞に〈タピオカミルクティー〉が出てくることからも察することができるが、ポップミュージックという一時期の流行の産物をテーマとしている。曲調も往年のディスコサウンドをモチーフとしており、懐かしさと新しさが同居したような不思議な仕上がりとなっている。J=J版では、そのコンセプトをより明確にしたアレンジが施されており、1970~80年代の洋楽ヒット曲のあからさまな引用が聴いていて楽しい。〈ポッポッポッ〉という歌詞の響きから鳩を連想して、ビジュアルに反映させているのも遊び心がある。
こういったコミカルなサウンドは、J=Jの2017年シングル曲「地団駄ダンス」以来のものだが、ただコミカルなだけではなく、ポップミュージックという泡沫の存在の儚さや哀愁みたいなものも含まれており、そういった深みも第2位という広く支持された要因ではないだろうか。
なお、第1位の「KOKORO&KARADA」は2661pts./980票で、第2位の「ポップミュージック」は2162pts./1020票。つまりポイント数では「KOKORO~」のほうが上だが、票数では「ポップ~」のほうが上回っているというねじれ現象が起きている。これは2018年度の第1位アンジュルム「46億年LOVE」と、第2位つばきファクトリー「今夜だけ浮かれたかった」のときと同様の現象であり、投票者の熱量がポイント数、支持の広範さが票数と捉えることもできる。
第3位は、BEYOOOOONDS「ビタミンME」。カゴメの野菜飲料「ONEDAY」とのタイアップソングとして、2020年4月15日にYouTubeにてMVが公開された。CDや配信でのリリースは2020年中には行われなかったのだが(2021年3月3日発売予定のニューシングルに収録予定)、今回のハロプロ楽曲対大賞ではノミネートされ、見事3位に輝いた。
チアガール姿で歌い踊るメンバーの姿が明るく可愛いキャッチーな仕上がり。映像内には「眼鏡の男の子」のキャラクターも登場するという趣向もあり、非常にBEYOOOOONDSらしい一曲となっている。
楽曲部門4位~
以下はグループ別に見ていこう。
【モーニング娘。'20】
今回の楽曲大賞での娘。のノミネート曲は、2020年1月リリースのトリプルA面シングル収録の3曲のみ。そのうち「KOKORO&KARADA」は第1位となり、他2曲の「LOVEペディア」「人間関係No way way」はそれぞれ6位・4位にランクインした。
この2曲は、どちらも作詞は児玉雨子、作曲はオオヤギヒロオで、歌メロディは同じなのだが、歌詞や編曲、振り付けやパート割りなどが異なっているという趣向で作られた楽曲である。なので楽曲大賞の順位はどうなるのか見ものだったのだが、「人間関係No way way」のほうが上位という結果になった。サウンド的には、「人間関係~」のほうの編曲は鈴木俊介で、ややファンキーなアレンジだったのが功を奏したようだ。
【アンジュルム】
アンジュルムの今回のノミネート曲は、8月リリースのシングルからの2曲と、中西香菜、室田瑞希のそれぞれの卒業配信シングルの計4曲。そこからベスト10には「ミラー・ミラー」が7位、「限りあるMoment」が10位にランクインした。スタイリッシュなディスコチューンの「ミラー・ミラー」が評価されたというのは、楽曲大賞らしい結果といえるだろう。
【Juice=Juice】
「ポップミュージック」との両A面シングルだった「好きって言ってよ」は第5位をマーク。前回2019年度の第1位だった「「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?」と同じく、作詞作曲は山崎あおい。コミカルな「ポップミュージック」との対比も感じさせるシリアスなラブソングだ。
また、同シングルのカップリング曲(アディショナル・トラック)だった「Borderline」「Va-Va-Voom」も9位・14位と高評価。宮本佳林の卒業曲的な位置づけの「続いていくSTORY (Symphonic Version feat. Karin)」は20位、金澤朋子の配信ソロシングル「黄色い線の内側で並んでお待ちください」は23位だった。
【カントリー・ガールズ】
2019年12月で活動休止に入ったカントリー・ガールズだが、同月リリースのベストアルバム『カントリー・ガールズ大全集①』に収録されていた最後の新曲「ずっとずっと」が13位にランクイン。カントリー・ガールズ名義では最初で最後のつんく♂書き下ろし曲だった。
【こぶしファクトリー】
2020年3月30日をもって解散したこぶしファクトリー。ラストシングルからは「青春の花」が8位、「スタートライン」が11位という結果だった。どちらの曲もこぶしらしい、力強さや熱量を伴った泥臭くも感動的な楽曲だった。
【つばきファクトリー】
つばきファクトリーは、シングルを2枚リリースして、表題曲以外も含まれており、全部で8曲のノミネートとなった。グループ最高位は「抱きしめられてみたい」の12位で、サビの〈境目がなくなるまで ぎゅって あぁ 抱きしめられてみたい〉というフレーズが印象的な切ない一曲だ。
他にもシングル表題曲の4曲はいずれもトップ20位以内にランクインした。
【BEYOOOOONDS】
前述の「ビタミンME」のほかは、2020年10月上演の主演舞台『演劇女子部「アラビヨーンズナイト」』のサントラCD収録5曲がノミネート。そこからは「アラビヨーンズナイト」が31位、「アラビアン・ラプソディ」が34位にランクインした。