KinKi Kids、2020年締め括るアルバムチャートで首位に 『O album』は王道&実験に溢れた“歌謡の本懐”を感じさせる1枚

 声音と色気を重視したラブソングが多数。ただし古臭くはないのです。松本隆作詞・細野晴臣作曲の「99%」など、音数をどこまでも引いていく洒脱なセンスに驚きました。単にオシャレぶった雰囲気モノではなく、最終的には剛&光一の声のエロスが光るように計算された音の配置と歌詞世界。すなわち、これぞ歌謡の本懐! KinKi Kidsってもしかすると、野口五郎や西城秀樹あたり、ピンで輝いていた男性昭和歌手のDNAを受け継ぐ稀有な存在なのかも。それを今様にアップデートしたのは共同プロデュースを手掛けた堂島孝平です。

 また、ソロで培ってきた要素を遠慮なく発揮しているのも本作の面白いところ。先行シングル「KANZAI BOYA」は、KinKi Kidsと命名される前にジャニー喜多川が思いついたグループ名をネタにした1曲で、ENDRECHERIが最も得意とするリフレイン命のファンクナンバー。ここに光一が、ちゃんと乗るんですね。舞台で培った演出力を総動員してジャニーさんのモノマネをやりきっている。それなのに笑いでは終わらない。ちゃんとエロティックなKinKiの歌謡曲として成立している。これってすごいことだなぁと思います。

KinKi Kids - KANZAI BOYA [Official Music Video]

 ジャニーズのアイドルの中でも特に主体性の強い二人組。それぞれの居場所からいつでも戻れる王道の歌謡曲。これは安定というより、一番の冒険、あるいは大実験かもしれない。KinKi Kidsの深みを改めて感じる傑作です。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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