マキシマム ザ ホルモン、YouTube企画で試みた新たな実験 独自のメロディラインが形成するアーティストの“らしさ”
自分の世界観に持ち込んでじっくり聴かせたのはAyase。「中学時代からホルモンに夢中で自身の音楽ルーツに強く影響を与えた」と話す彼は、ボカロを使用して挑戦。序盤の〈全知全能のゼウス 懺悔ノンフィクション〉の入りを早め、ワードの繰り返しを多用。ボカロによるボーカルとメロディラインは、ホルモンのトラックとは思えない面白味のある無機質感が漂い、上ちゃんも「ダース・ベイダーかと思った」と驚いた。
ヤバイTシャツ屋さん・こやまも非常に見応えがあった。腹ペコ(ホルモンのファンの愛称)のこやまらしく、ホルモンっぽさを追求するリスペクトにあふれたメロディで歌い上げた。ちなみにヤバTといえば、LMFAOの「Shots」をオマージュした人気曲「あつまれ!パーティーピーポー」がある。パロディ曲を作る器用さと大胆さが、今回の企画にも生かされた。デスボイスを駆使する構成は、確かにホルモンテイスト。
同じくホルモンの大ファンを公言する、霜降り明星の粗品。漫才でツッコミをしているところを見ても分かるが、喉が強き、ロックな声質の持ち主だ。さまざまな楽器演奏ができるなど音楽にも通じているとあって、荒々しい完全燃焼系のシャウトメロディながら、何気にバックトラックに丁寧になぞるように歌を乗せている。
歌い手によってアプローチの仕方はまったく違う。ただ、それぞれが自分でメロディラインを想像したとあって、結果的に各自のルーツやバックボーンがはっきり表れたのではないだろうか。またR-指定を顕著として、ホルモンのトラックに合わせることで、今までとはまた新たな音楽性が生み落とされた部分もある。ホルモンだけではなく、今後さまざまなアーティストでも試してほしい企画である。
■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter