福山雅治『AKIRA』、大差をつけてチャート首位に 目の前にいるような歌声の存在感&特徴的なリズムパターンに注目

 アルバムを実際に聴いてみると、冒頭の表題曲「AKIRA」から意表を突かれる。TLC「No Scrubs」のような、2000年前後のR&Bを彷彿とさせるサウンドとリズムパターンはおもしろいし、デジタル録音以降、とりわけDAW特有の切れ味鋭い無音の挿入も自分の嗜好にクリーンヒット。こうした無音のさまざま使い方を総称して“無音案件”として注目しているが、賛同者はあまりいない。無音案件で言えば「Popstar」はイントロから景気よく無音が挿入される。「AKIRA」にも通じるが、ギターのカッティングの使い方や演奏のキメの作り方から考えて、アタックがはっきりとして、かつザクッと切れ味のいいサウンドを追求した結果がこれなのだろう。

 ただ、アルバムを通してボーカルのバランスが大きく感じられる。俳優としてもしばしばものまねされる、特徴的な通りのよい声がセンターに堂々と定位してこれでもかと主張してくる。なぜこれほどまでに……と思わないでもないが、それが欠点になっているわけでは決してないし、何よりもこの声こそが人を惹きつけるチャームでもあるのは間違いないだろうから(しいていえば、前面に張り付くようなその存在感が、サウンドの空間的な奥行きを塗りつぶしているきらいがある)。「革命」の歌始まりのイントロなんかは生っぽいリバーブがあったほうが映えそうなものだ。オケとボーカルの乖離というのは日本のポップミュージックのサウンドメイキングについてしばしば語られるところだが、それにしても福山の声、もともと持っている存在感に対して距離感が近い。目の前にいるのかと思うくらいだ。

 そんな風に思いを巡らせてみると、一番似ているのはラジオから聴こえてくる声なのではないか。ドライで、近くて、大きい。現代的に言えばASMRと並べることも可能かもしれないが、ASMRがじかに触れてくるような感覚を与える一方で、ラジオの声はもうちょっと距離がある(それはマイクと語る人との物理的な距離と一致している)。そう思うと『AKIRA』における声の存在感に納得できるのだった。

福山雅治 – 30th ANNIVERSARY ORIGINAL NEW ALBUM「AKIRA」SPOT

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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