Def Tech、結成20周年に深まる多様性と解放感 新作『Powers of Ten』と合わせて聴きたい15曲のプレイリスト

Def Tech、結成20周年に深まる独自の音楽性

 結成20周年、デビュー15周年のアニバーサリーイヤーを迎えたDef Techが再び注目を集めている。きっかけは、2005年のヒットチューン「My Way」のリバイバルヒット。TikTokのダンスチャレンジ「#即興チャレンジ」というハッシュタグで拡散し、10代、20代のリスナーに浸透したことが大きな要因だ。この現象はそのまま、Def Techの魅力——サーフカルチャー、ヒップホップ、クラブミュージックを融合させた音楽性——が2020年の音楽シーンにおいても十分に伝わっていることを示している。

 Micro、Shenにより2001年に結成されたDef Tech。サーフロック、ヒップホップ、ハワイアン、レゲエなどを融合させた楽曲。そして、自由であること、リラックスすること、愛する人たちとのつながりなど、人生におけるもっとも大切なテーマを含んだ歌によって、音楽シーンのなかで確固たる存在感を放ってきた。「My Way」を含む1stアルバム『Def Tech』(2005年)は約250万枚以上のセールスを記録。インディペンデントを貫く活動、Micro、Shenの“free&easy”なイメージを含め、それまでの日本にはなかったスタイルを確立したのだ。

 2007年に解散、3年後の2010年に再結成した彼らだが、その後もマイペースな活動を続けている。動きの激しい音楽シーンにおいて、サーフカルチャーを基盤とした生活を送りながら、質の高い音楽を生み出し続けているDef Techのスタンスは、アーティストの理想と言ってもいいだろう。

 その充実ぶりは、10作目のアルバム『Powers of Ten』にも反映されている。先行配信された「Like I Do」を含む本作。その根底に流れているのは、ゆったりと穏やかなグルーヴ感、心地よいウェーブを感じさせる旋律とリラックスしたラップだ。ジャンル的にはチルホップ、ローファイ系ヒップホップだが、この傾向は、彼ら自身の生活環境や音楽観の変化ともつながっているのだと思う。

 初期のDef Techのライブは、驚くほどにアグレッシブだった。それまでの日本には存在しなかったスタイルを掲げた彼らはおそらく、「目の前のオーディエンスに自分たちの音楽を叩きつけてやる」という思いでパフォーマンスしていたのだろう。しかし、結成から20年目を迎え、メンバー自身も年齢を重ねたことで、徐々に音楽性も変化。アタックの強い楽曲よりも、リラクシンなサウンドを求めるようになったのだ。そのことを象徴しているが、『Powers of Ten』の「Surf Me To The Ocean」。波の音から始まるチルなトラック、“心と体が疲れたときは、ビーチに行こう”というメッセージを掲げた歌詞は、彼らの生活そのもの。緊張の強い日々を送っている現代人にひと時のリラックスを届けてくれる楽曲と言えるだろう。

 2020年の社会情勢を映し出す、強いメッセージ性を込めた楽曲も印象的だ。〈SNSからFace2Face〉というラインが響く「Face 2 Face」、ソーシャルメディアで“演出した自分像”をアップし続ける人々を描いた「Instabation」。日本語を真っ直ぐに伝えるフレーズからは、“できるだけ率直に自分たちの思いを歌詞にしたい”という意思が感じられるが、そこにはコロナ禍に見舞われた現状も影響しているのだと思う。会いたい人に会えない時期が続いたからこそ、人々は他者とのリアルな交流を求めているはず。アルバム『Powers of Ten』には、そんな時代の気分もたっぷりと込められているのだ。

 さらに〈君といる時のこの僕が好き〉という歌詞を持つラブソング「I Like Me(Day Time)」、ハワイアン系のサウンドとダンスホールレゲエを融合させた「All I Want Is Your Love」などの多彩な楽曲を収録。今作のなかでもっともアッパーな「Make Some Noise(Feat.YAY)」も、アルバムを象徴する楽曲の一つだ。90年代半ばのヒップホップを想起させるこの曲は、彼らのルーツを改めて示し、Def Techの核になる音楽性につながっている。“仲間と集まり、思い切り騒いで楽しむ”という雰囲気もやはり、彼らの大きな魅力だ。

 Def Techは11月28日に配信ライブを開催。アニバーサリーを彩る新作『Powers of Ten』のリリースをきっかけに、多様性と解放感を併せ持った彼らの音楽はさらに多くのリスナーを魅了することになりそうだ。

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