BTS、新曲「Dynamite」ポップス的構成と変わらないメッセージを分析 全歌詞英語であるシンプルな理由も
8月21日、BTSが新曲「Dynamite」を全世界同時リリースした。リリース前の記者会見によると、当初からリリース予定があったわけではないがCOVID-19禍で数々の計画の変更があり、世の中とファンを元気づけるためにリリースすることになったとのことだ。
今回の「Dynamite」は、BTSとしては珍しくカッティングギターの音が印象的な軽快なディスコファンク調。K-POPのシグネチャーともいえるドラマチックで風変わりな転調やダンスブレイクはないが、メロディは同じコードの繰り返しで曲の大部分では中毒性のあるリズムが延々と繰り返され、終盤に向かって盛り上がっていくという構成は、近年の欧米のポップミュージックではよく見られる構成だ。この曲の前にリリースされた日本オリジナル曲「Stay Gold」は、メインであるサビを目立たせるためのコードワークが鉄板であると言われるJ-POPソングのお手本のような楽曲だった。若干「洋楽っぽい」構成に寄っていた「ON」の前の「Boy With Luv」、「Stay Gold」と「Dynamite」を並べて聴くだけでも、K-POP/J-POP/POPの違いが明確にわかると言ってもいいかもしれない。この様な曲ごとの大胆なパフォーマンスの変化は、まさに彼らが「アイドル」であるからこそ成り立つことであり、「アイドル」だからこそ表現できる領域なのではないだろうか。
「アイドル」とはパフォーマンスする主体であるメンバー自体が好かれ、支持されることが本質の存在であり、「アイドルファン」は基本的に純粋な楽曲やパフォーマンス単体そのものというより、メンバーを通して表現される曲やパフォーマンスこそを好むのだと考えると、実際は「言語」や「文化」の違いが最も障壁となりにくいジャンルであるはずだ。また、主に自分の言いたい話を作品に込めるということが多くの部分を占めるであろう「アーティスト」との違いのひとつに、大衆やファンの求める・好むであろう姿を表現することも「アイドル」の本分のひとつであるという部分がある。いわばF1におけるレーシングドライバーのような「純パフォーマー」としての側面が大きいのがアイドルであり、K-POPアーティストの多くが即ちアイドルであるというのはそういうことだ。パフォーマーが主体なので、BTSがパフォーマンスすればそれがBTSの音楽になり、楽曲の一貫性やジャンル的正統性は関係なく、あらゆるジャンルの音楽や言語でパフォーマンスして良いという自由さはアイドルの特権でもあるだろう。