デュア・リパ『クラブ・フューチャー・ノスタルジア』は世界のポップミュージックの俯瞰図に 星野源ら参加の経緯と魅力に迫る

デュア・リパ『Club Future Nostalgia』の魅力

 2017年に「New Rules」が話題となり、一躍時代の寵児となったイギリス出身の女性アーティスト、デュア・リパ。同曲のMVの再生回数は現時点で22億回を超え、現代における女性の連帯〜エンパワーメントの象徴的作品として世界的なヒットを記録した。その後、マーティン・ギャリックスやカルヴィン・ハリスといった大物DJ・プロデューサーとのコラボも実現。2019年の第61回グラミー賞では最優秀新人賞を含む2部門を受賞するなど、新世代のグローバル・ポップ・アイコンとしての地位を着実に築いている。

 そんな彼女が今年春に発売した2ndアルバムが『Future Nostalgia』だ。直訳すれば“未来の懐かしさ”と題された同作は、80年代のエレクトロ・ポップや90年代のクラブカルチャーといったレトロなダンス・ミュージックを基調としている。そして特筆すべきは、先駆けてリリースされ同作にも収録されている「Don’t Start Now」である。力強いベース音によるダンサブルなサウンドもさることながら、注目すべきはその歌詞だ。

〈Don’t show up/Don’t come out〉
(姿を現さないで、出て来ないで)

 元々は別れた恋人に対して言い放つフレーズだが、奇しくもコロナ禍における外出自粛を呼び掛けるメッセージとして親しまれたのである。もちろん曲は以前から存在していたわけだが、ちょうどアルバムのリリースタイミングがステイホーム期間と重なったというのもあり、ラジオやSNSなどで人気を集めたのだ。

「この数ヶ月間というのは本当に非現実的な世界だった。まるで私とクラブに一緒にいるかのように、皆が家に居ながらにしてオンライン上で私の『Future Nostalgia』を楽しんでくれていたのだから」(彼女本人のコメントより)

 こうした偶然のめぐり合わせと、新時代を象徴する彼女のアイコン性とが絡み合った結果、同作は単なる“今話題のポップ・アーティストの2ndアルバム”の域を超え、2020年という未曾有の年を象徴する作品へと変貌を遂げたのである。

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