THE COLLECTORS 加藤ひさしが語る、現状を歌うことの必要性「その時代その時代を歌ってこそロックだと思う」

加藤ひさしが語る、現状を歌うことの必要性

「峯田くんの言った言葉が俺の心情を的確に汲んでくれた」

ーーそういえば、「オートバイ」を聴いていて思ったんですけど、今ってバイク文化がどんどん廃れていますよね。

加藤:バイクの駐輪場を作んないからね。ほんとにひどいよね。

ーートヨタがバイクを作ってないからかなぁ。

加藤:そういうことだと思うんですよ。トヨタも三菱もバイクを作ってないからじゃないかな。

ーーホンダとスズキが作っていてもーー。

加藤:そう、なぜならホンダは国の息がかかってない、すばらしいメーカーだと聞いてるよ。だから見事にトヨタファーストなわけですよ。憶測だけどね。国がやっていることが、いかに企業とくっついてるのかが、すっげえよくわかるよね。だって街中に溢れてる東京オリンピックを見越して作ったロンドンタクシーに似た形の黒いワゴンタクシー。あれ全部トヨタ製だから。

ーー「オートバイ」のような曲も、ベースはそういう問題意識がある。

加藤:そう。俺たちの歌は、一見普通のポップソングかもしれないけど、そういう政治的なメッセージ性を必ず持ってる。今の世の中がどう牛耳られて、なんでこうなっているのか、早く気付け!って。それがいくらかでも変われば、もう少し住みやすくなるかもしれないから。

ーー「香港の雨傘」は、さらに直球な歌ですね。

加藤:そうですね。香港、民主化運動をあれだけ力を持ってやる住民がいるってすばらしいなぁ、と思いました。俺、デモに参加したことあるのは、脱原発のデモぐらいだったんですけど、デモの内側と外側にいるので、全然景色が違いますからね。デモを横目に通り過ぎて行く人たちを見た時に、「なんて無関心なんだ」って思ったし。でも原発が爆発するまで、俺は外側の人だったんですよ。だから、香港の人たちのあのエネルギーは本当にうらやましいし、日本もああなんなきゃいけないんだよなってすごく思います。

ーー「旅立ちの讃歌」は、どういうところから発想が始まったんでしょうか。

加藤:2年前にTHE COLLECTORSのドキュメンタリー映画(『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』)を作った時、あの中で峯田(和伸)くんの言った言葉が、俺の心情を的確に汲んでくれていて、すんげえ嬉しかったんですよね。まず、THE COLLECTORSを初めて観た時、本物だと思ったと。そのイメージが、『時計じかけのオレンジ』のマルコム(・マクダウェル)が目をギュッと開いて固定されるシーン、あの感じだと言っていて。まさに俺は、『時計じかけのオレンジ』を観た時、あれを日本語のロックでやりたい、と思ったんですよ。「これだ!」と。でも、それを誰にも言ったことはない。峯田くんはそれを言い当ててくれて、「うわぁ、間違ってなかった、それを感じてくれた人がいたんだ」と。

 あと峯田くん、俺が作っているイギリスに強烈に憧れる音楽のことを、一種の逃避「ここじゃないどこかに自分の居場所を見つけたい、ずっとそれを探してるからTHE COLLECTORSは変わんないんだ」って言ったんですよ。それを聞いて、「あ、そうだなぁ」と思って。何年経っても、あの頃自分が憧れたサウンドにまったく近づかないし、目標は全然変わってないんだよな、ここじゃないどこかなんだよなっていうのを表現したくて。それが「旅立ちの讃歌」と「オートバイ」には表れていますね。今やんなきゃ二度とできない、そこに行かなきゃっていう。

THE COLLECTORS

ーー『別世界旅行』というタイトルは、ジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』からの発想だと、『池袋交差点24時』(THE COLLECTORSによるポッドキャスト)で話しておられましたね。

加藤:そうです。俺、SFが昔から好きでね。ジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』、ほんとにSFの古典の古典、20世紀の初頭に映画にもなって。モノクロのサイレント映画で、あとで色付けされたんですけどね。その象徴的なシーンが、ロケットが飛んでいて月に刺さるっていう。それで今回、コロナウイルスが延々とテレビで取り上げられていた時に、ウイルスの形が日食のコロナに似てるからコロナウイルスなんだ、って報道されていて。確かにそうだ、と思って見ているうちに、なんかそれが星に見えてきて。『月世界旅行』みたいに、コロナにギターを一撃ぶっ刺す、それで駆逐する。そんな『月世界旅行』もいいよなぁと思って。

ーーそれをもじって『別世界旅行』。

加藤:そう。『別世界旅行』ってタイトルはね、イギリスのエンジニアで、ライブDVDとかボックスセットとか、ここ何年もミックスダウンしてもらってるケニー・ジョーンズから届いたメールがヒントになったよ。イギリスもコロナが流行っている時で、「日本は大丈夫か? ロンドンはまるでSFだ、違う世界にいるみたいだよ」って。「うわ、別世界か」と思った時に、頭の片隅にあった『月世界旅行』と結びついて。「あ、『別世界旅行』、今出すにはいちばんいいタイトルなんじゃないかな」と思ったんですよね。

■リリース情報
24th Album『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』
2020年11月18日(水)発売

初回限定盤(CD+DVD):¥4,600+税
通常盤(CD):¥3,000+税

<CD>
1.お願いマーシー
2.全部やれ!
3.ダ・ヴィンチ オペラ
4.人間は想い出で出来ている
5.さよならソーロング
6.夢見る回転木馬
7.オートバイ
8.香港の雨傘
9.旅立ちの讃歌
10.チェンジ

<DVD>
THE COLLECTORS TOUR 2019「超えて行こうぜ!限界ライン“YOUNG MAN ROCK”season2」@EX THEATER ROPPONGI

1. 限界ライン
2. ニューヨーク気分
3. 99匹目のサル
4. 青と黄色のピエロ
5. …30…
6. ひとりぼっちのアイラブユー
7. 希望の船
8. クライム サスペンス
9. ノビシロマックス
10. NICK! NICK! NICK!
11. 5・4・3・2 ワンダフル

 

■ライブ情報
『THE COLLECTORS, HISASHI KATO 60th BIRTHDAY LIVE SHOW “Happenings 60 Years Time Ago”』
会場:大宮ソニックシティ 大ホール
日時:2020年11月23日(月・祝)
<時間>
1回目:OPEN 15:30、START 16:15
2回目:OPEN 18:15、START 19:00
*1ステージ約1時間のパフォーマンスを予定
全席指定
チケット代(税込):¥6,000

■ツアー情報
『THE COLLECTORS TOUR 2021 “A Trip in Any Other World”』
1月11日(月・祝)柏・PALOOZA*
1月16日(土)札幌・cube garden*
1月23日(土)仙台・Rensa*
1月31日(日)浜松・窓枠★
2月7日(日)渋谷・CLUB QUATTRO*
2月11日(木・祝)水戸・LIGHT HOUSE*
2月14日(日)京都・KYOTO MUSE*
2月20日(土)熊谷・HEAVEN’S ROCK VJ-1*
2月27日(土)福岡・CB★
2月28日(日)広島・セカンド・クラッチ★
3月20日(土・祝)大阪・BIGCAT★
3月21日(日)名古屋・CLUB QUATTRO★
*→1日2回公演 ★→1日1回公演
※両公演とも1ステージ約1時間を予定
(開場・開演時間はオフィシャルサイトでご確認ください)

オフィシャルHP
日本コロムビア THE COLLECTORS公式サイト

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