ザ・コレクターズ 加藤ひさし&古市コータローが語る、結成から色褪せぬモッズ精神と青春時代の感覚

ザ・コレクターズ、不変のモッズ精神

 THE COLLECTORS、2017年3月1日に、結成31年にして初の日本武道館ワンマンを成功に終わらせて以降、最初のニューアルバムとなる『YOUNG MAN ROCK』。

クライム サスペンス / ザ・コレクターズ

 加藤ひさしが、The Whoの「YOUNG MAN BLUE」からいただいてこのタイトルを考えたそうだが、ドキドキやヒリヒリするような感覚、総じて言うと青春感に満ちた、瑞々しさの極みのようなこの10曲は、まさにタイトルどおりの作品だ。

 結成から32年、THE COLLECTORSだけが、なぜこんなエバーグリーンなことが可能なのか……あ、正しくは、「THE COLLECTORSと甲本ヒロト&真島昌利にだけ可能」か。とにかく、そのあたりまで踏み込んで、加藤ひさしと古市コータローに聞いた。

 なお、このアルバムのリリース日は11月7日だが、11月23日からはTHE COLLECTORS初めてのドキュメンタリー映画『さらば青春の新宿JAM』が公開になる。彼らの出発点である新宿JAMの閉店、そのJAMで2017年12月24日に行ったワンマン、THE COLLECTORSの歴史、東京モッズ・シーンの記録ーーこの4つを軸にした同作についての話も聞いた。(兵庫慎司)

今のシーンで普通に勝負できる作品になった(古市)

【左から】加藤ひさし、古市コータロー

ーーニューアルバムですが、曲を書くペース、歌詞を書くペースは、ずっと変わらずですか?

加藤ひさし(以下、加藤):いや、もう、やればやるほど書けなくなりますね。いろいろ枯渇するといいますか。今回のアルバムに関して言うと、なんにも曲を用意してなかったんですよね。2年前に前作を作った時は、「希望の舟」っていう歌だけは、メロディとイメージができあがっていたんですけど、今回はそういうのがひとつもなかったんで。まあちょっと、プレッシャーはありましたね。

ーーどうやってこんなにいつまでもエバーグリーンな楽曲ができるんだろう、なんで枯渇しないんだろう、と思っての質問だったんですが(笑)。

加藤:いやいや、もう年々、アイデアがなくなっていくわけですから。今回はほんとに、作ってる最中はものすごい不安で。こうして作り終わるとね、よくもまあこんなにアイデアが出たな、1曲1曲違うテーマを揃えられたな、って自分でも感心するんです。それぐらい、始める時は何もないんですよ。

ーーそういえば、昔の加藤さんのインタビューで、「やりたいことなんて、最初の2枚のアルバムで終わっちゃってる」という名言がありました。

加藤:いや、大体そうだよね。コータローくんね? どこのバンドもアマチュア時代の曲なんてアルバム2枚分ぐらいしかないじゃないですか。3枚目以降は、作ろうと思って作っていかないと、作れない。それ以降は、どんどんどんどん大変になる。

ーーかといって、音楽性をどんどん変えていくようなバンドじゃないですしね。

加藤:コレクターズの場合はね。人によってはね、音楽ジャンルを変えて新しいものを作っていく人もいるけど、コレクターズはオーソドックスなロックンロールですからね。なかなか、難しいですよ。

ーーでもこのアルバム、すばらしいじゃないですか。

加藤:まあそれは、結果論ですね。

古市コータロー(以下、古市):(笑)。

加藤:作り終わったばっかりなんで。作ることに必死で、これがいいのかよくないのかも全然わかんない。

ーーコータローさんは?

古市:いや、最近、iPhoneで、ミスチル(Mr.Children)の新譜とすごく聴き比べしてるんですけど。

加藤:(笑)。

古市:何がしたいかっていうと、ミスチルからコレクターズに、パッと一瞬にして曲が変わった時に、こっちが感じるアタック感っていうのは、同じなのだろうか、違うのだろうかってことを検証したいだけなんですけど。でも今回のアルバムは初めて……なんて言うんだろうな、彼らと同じところにいるんじゃないかな、っていう印象を受けましたね。たぶんミスチルのヘビーリスナーが聴いても、すんなり入っていけるような世界観を、出せたんじゃないかなと思いますね。耳が受ける第一印象というのかな。勝負できるなと思いましたね。ミスチルと勝負ってことじゃなく、今のシーンで普通に勝負できる作品になったんじゃないかなと、すごく感じてますけどね。

14歳感がずーっと残ってる気がする(加藤)

ーー7曲目の「永遠の14歳」という曲が僕はとても好きなんですけども。加藤さんの中に、作詞家的な視点で書いている部分と、自分の本音で書いている部分があるとしたら、この曲はどちらでしょうか。

加藤:これはけっこうごちゃ混ぜになってますよね。〈カガミよ カガミ〉で歌い出すところはちょっと作家っぽいんだけど、だんだんだんだん本音が出て来る感じですよね。〈蹴り放題 ガードレールも あるぜ〉とか、作家っぽくないですよ。自分がこんな歳になっても、うまくいかない日があるとか、ものに八つ当たりしたりとか。そういう気持ちになるじゃないですか。だから、14歳って言ってるけど、今の自分を歌ってる、本音で。

ーーその頃から変わってない?

加藤:このロックンロールの仕事は……まあラッキーでもあるけど、変われないよね?

古市:うん。

加藤:14歳の時にロックを聴いて、ビートルズ(The Beatles)とかに夢中になってた、あの「ウワーッ!」ていう感じはいまだにありますよ。それを仕事にしたから、他の仕事をしてる人よりも、14歳感がずーっと残ってる気がする。

古市:まったくそうですね。たぶん、何も変わってないと思いますよ。もちろん大人だからね、税金も払えば子供も育てるんですけど、根本にあるものは失ってない気がしますよね。

加藤:その時思ってた気持ちがロックだよなって、思ってんですよ。いつも思うんですけど、自分の好きなバンドがあるじゃないですか。たとえば僕の場合だったらThe Whoってバンドだったり、The Kinksってバンドだったり。彼らがリリースするアルバムが……彼らのやってることがナチュラルなんだと思うんですけど、歳と共に、どんどん重厚なものになったり、渋いものになったり。でも僕は、彼らに出会った時の……ポール・ウェラーだったらThe Jamをやってた時の、あんな曲を何度も歌ってほしいですよ。フーの新曲が75歳だったとしても、彼らが25歳の時に歌ってたような曲を歌ってほしいんですよ、今でも。それを逆に自分に当てはめるんですよ。こんなに長くやってるけど、きっとファンも俺と同じようなことを思ってるよね、1stアルバム、2ndアルバムをずっと作っててほしいよね、って。

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