“GACKT無惨”によるLiSA「炎」カバー、『鬼滅の刃』ファンからも好評の理由 動画から感じた作品に対する敬意

作品に敬意を表した“歌ってみた動画”

 「炎」は、ドラマチックで切ないメロディのバラード。映画でフィーチャーされた煉獄杏寿郎を連想させるような、強さと優しさに満ちた歌詞は、身近な言葉だけで構成されているのに胸に深く突き刺さる。音楽と言葉の力を感じさせてくれるこの曲は、聴くだけで映画の中で観た光景が頭に浮かび、感動が蘇る。もちろん鬼滅ファンも絶賛の嵐だ。

 人気作品に関する動画は、注目を集めやすい反面、中途半端なものやリスペクトが感じられないものだと反感を買いやすい。作品のファンは、シビアな目でそのクオリティや姿勢をジャッジするからだ。その中でGACKTは、高いクオリティの歌唱と作品への敬意をしっかり示していた。

 まず歌う前にGACKTは、「この素敵な曲に敬意を表し、無惨の雰囲気で歌いたいなと思います」「この作品が大好きな人達に、こんなアカペラあるんだっていうのが届けば、こんな表現があるんだって伝わればいいなと思います」と、作品のファンへ向けたコメントを残す。しかし歌が始まれば、そこはもうGACKTの独擅場。原曲よりもゆったりとしたテンポで、力強く、そして繊細に、歌詞の一つひとつを大切に歌い上げ、LiSAの歌う原曲とは別次元での魅力を見せつけた。またこの動画は、アカペラ一発録りであることに加え、アングルの切り替えすらない。無惨のコスプレをしているという点以外は非常にシンプルだ。派手な効果や演出を削ぎ落とし、楽曲と歌唱力で勝負した潔さも、作品への敬意の表れだったのかもしれない。

 まさに原作から抜け出してきたかのような完璧な“無惨コス”、そして圧倒的な歌唱力と作品へのリスペクトで、鬼滅ファンの心も掴んだGACKT。そのカリスマ性は、流石の一言だ。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる