tricotがコロナ禍で迫られた新たな制作スタイルとは? 4人が語る、自粛期間を経て完成したアルバム『10』の全貌

tricot、4人で語る新アルバムの全貌

 

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ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho)

「元に戻りつつある中でも怠けず考えられたらいい」(中嶋)

――ちなみに皆さんは家にいる時期に、新たに始めたことはありますか。

ヒロミ:あんまり聴いたことないものを聴いてみようと思ってジャズを聴いてみて。Netflixとかにそういうドキュメンタリー番組とかあるじゃないですか。あれのヒップホップのも見たし、ジャズも昔の歴史を勉強したり、そういうのをちょこちょこ見てました。

――確かに映像で見ると歴史的な背景も入ってきますね。

ヒロミ:なんか歴史を知るのが面白かったです。曲もですけど、昔からジャズには人権のこととか関わってるんやなっていうのが勉強になりました。

――Black Lives Matter運動もその頃広がっていましたし。

ヒロミ:そうですね、詳しくはなかったんですが、一番王道なとこから聴いてみようと思って。

――キダさんは発見やブームなどはありましたか。

キダ:音楽的なインプットはなかったかもしれないですね。あまり他のものに興味が持てなかったというか、気持ち的に。そういうのもあって、新しく何かを聴くように、とかあまりしてなくて、ずっとパン作ってました(笑)。

――自粛期間って、何かそれまで作らなかったものを作る人は多かったですね。

中嶋:私、火鍋がめちゃめちゃ好きなんですけど、外食に行けなかったので、初めて火鍋の作り方を知りました(笑)。

――分かります(笑)。吉田さんは何かこの間の発見は?

吉田:周りのミュージシャンがめちゃくちゃデモを送ってくるんですよ。僕は聴いてるだけなんですけど、自ずと周りに与えられてましたね。みんながフツフツと家でやってるものを一方的にぶつけられてたんで、「ああ〜」と思いつつ。でもみんなそうなんだと思いながら、僕も家で出来るーーあんまり曲を作ったりするタイプではないので、いつか生でやるであろうことを準備しておこうって感じでしたね。別に自粛やからってシュンとなってるわけでもなく、淡々としていた。家にいて毎日ルーティーンで淡々と練習メニューを自分で組んで。ただ練習するだけやったら飽きるんで、映画見ながらとか別のものもつけながら、譜面を見て練習してました(笑)。

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――(笑)。アルバムに話を戻すと、「箱」はマスロックとはまた違う変拍子というか。若干、最近のコーネリアスのリズムの難易度を思い出して。

吉田:元となったのは海外の大所帯フュージョンバンドなんですけど、ちょっとコーネリアス的なところとわりと近いところ、マスロックという感覚よりはフュージョンとかスペーシーな感じとか、どっちかというと現代音楽に近い感じですね。

――スタジオに入ってからの最終的な練り上げはじっくりやったんですか?

中嶋:いや、どの曲も1日に1〜2曲ぐらい触って終わり、という感じだったので、1曲にかけられるアレンジの時間は多分3〜4時間でしたね。

――すごい瞬発力。で、個人的に「炒飯」ですごく救われて。一言で言うと分かり味が深い。

中嶋:(笑)。確かに一番シンプルな歌詞かもしれないですね。普段使うような言葉で構成された感じの。

――〈食べれるとおもって 作りすぎるのも 毎回のことで 自分のこともわからないな〉という部分など、すごく腑に落ちます。

ヒロミ:これはもともと人に届きやすいような曲を作ろう、というようなコーナーをもうけて……。

中嶋:色々チャレンジしてみよう、みたいな。『真っ黒』を作り終えてすぐぐらいの時、作り方がこうなるとは思っていなかったので。自ら作り方を変えていき、新鮮な曲作りをやりたいなとも話していました。若干、もとの想定していた曲ではなかったんですけど、その届きやすいっていう意味では作戦通りというか。

キダ:もともと、どメジャーな曲のメロディだけを……。メロディに違うコードを乗せてみるっていう作り方をしていて。でも、もっと明るいポップな感じになるかと思っていたらならなかった。

吉田:途中で起伏をなくしたいんです、と話していたら、そっちになっちゃって。平坦だからこそちょっとウルっとくることあるじゃないですか。ガンガン行くんじゃなくて、ずっと平坦なんやけどちょっと上がるみたいな感じの雰囲気って、あんまりtricotでやってこなかったし、メロディもそんな感じだったので、そっちに持っていきたいと思い、無理やり進路変更しました。

――今の状況が変わらない毎日の中で、1ミリでも進もうという気持ちになれる曲だなと。

中嶋:ありがとうございます。

――そして「幽霊船」はチャレンジングな構成ですね。

中嶋:そうですね。結構、丁寧に作ったような印象の思い出が。これも「おまえ」と同じタイミングですでにデモがあって。なので自粛期間に入る前からタネみたいなものはあって、歌も乗っていたんですけど、自粛期間が明けてからアレンジするとなった時、サビがなくて。(サビが)なくてもかっこいいのではないか説が出て、どういう風にサビなしで展開をつけていこう? となっていたんですけど。最終的にサビがあった方が、しっかりした曲になるというか、その辺りは吉田さんが言ってくれて。それで頑張ってサビをつけました(笑)。サビらしいサビをもっとよくなるよう考えて作ったというか。

――〈平穏な生活は取り沙汰され 窮屈な配慮に支配される〉という歌詞も相まって、サビが曲の印象を明快にしていると思います。そして現在ライブも再開していますが、今後の展望を教えてください。

中嶋:やっぱ1日1日状況が変わっていく中で、その時々で頑張っているのは私たちじゃないというか。スタッフさんが調整して、何かあったときの責任も一番考えてくれたりしていたので、自分たちはもちろん、いつでもライブをしたいし、また海外とかにも行きたいですけど。それが安心してできるまでは様子を見ながら、ちょっとずつ元の世界に近づけていけたらいいなと思います。この期間で、さらに今までやっていなかったようなアイデアも考えられたり、思いついたりできるいい機会にもなった。元に戻ることだけが目標ではなく、新しい方法ややり方も、元に戻りつつある中でも怠けずに、待っているだけではなく考えられたらいいなと思います。

 

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tricot『10』
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■リリース情報
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『10』(読み:ジュウ)
2020年10月21日(水)発売

【CD+Blu-ray】 / CTCR-96004/B ¥5,500(税別)
【CD+DVD】 / CTCR-96005/B ¥4,000(税別)
【CD Only】 / CTCR-96006 ¥3,000(税別)

<CD収録曲>
1.おまえ
2.サマーナイトタウン
3.WARP
4.箱
5.炒飯
6.あげない
7.悪戯
8.幽霊船
9.Laststep
10.體

<DVD> ※【CD+DVD】のみ 
1, 悪戯(Music Video)
2, メジャー1stアルバム「真っ黒」リリース記念ワンマンツアー“真っ白”
at Zepp DiverCity 2020.3.14 無観客公演(メンバーによる副音声付)

<Blu-ray>※【CD+Blu-ray】のみ
1, 悪戯(Music Video)
2, 右脳左脳(Music Video)
3, メジャー1stアルバム「真っ黒」リリース記念ワンマンツアー“真っ白”
at Zepp DiverCity 2020.3.14 無観客公演(メンバーによる副音声付)

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