チャットモンチー、LoVendoЯ、tricot……独自のプレイが光る女性ギタリスト6選
マイケル・ジャクソンの映画『THIS IS IT』で脚光を浴びたオリアンティ。そのマイケルやジェフ・ベックのバックで名を馳せたジェニファー・バトゥン。ジャック・ホワイトやベック(・ハンセン)も敢えて女性ギタリストを起用することが多い。そこには腕はもちろんのこと、ビジュアル面と同時に女性ならではの感性を求めているようだ。
そして、日本にも多くの女性ギタリストが活躍している。
アメリカでスコット・ヘンダーソンに学び、先述のオリアンティと共に「世界で二人しかいないPRSの女性モニター」として知られる安達久美、同じくアメリカの音楽学校・MI(Musicians Institute)出身、宇多田ヒカルを始め多くのサポートで知られる菅原潤子、KinKi Kidsのサポートやビリー・シーンとの共演も果たしたJikkiなどの実力派がいる。ロックバンドでは元ナンバーガールの田渕ひさ子などが人気だ。
そんな中、独自のスタイルでJ-Rockシーンを切り開く女性ギタリストたちに注目してみたい。
みんなの爆裂先輩 キダ モティフォ(tricot)
00年代のポストロック・オルタナティブの象徴ともいうべき、起爆要素たっぷりのギタリスト。歌に絡みついていくオブリガード、分散和音を巧みに利用したアルペジオとパッセージ、鋭くも痛すぎないカッティング。音色のバリエーションよりも、弾くフレーズで楽曲の世界観を作り上げている。変拍子や突発的な楽曲展開を自在に操るドラマチックな激情ギターはtricotの緻密な幾何学音楽を象徴するものだ。
インストのバンド経験もあり、垣間見えるフュージョン的な“おしゃれコード”や、7th (#9th) の“ジミヘンコード”にスティーヴィー・レイヴォーンのブルース魂を感じてみたりと、さりげない引き出しの多さも魅力である。フロント+センターのみ、リアなしというピックアップ構成のオリジナルのストラトモデルにも強いこだわりと独自のセンスを感じる。
実力派ツインギター LoVendoЯ(魚住有希&宮澤茉凜)
ポップなルーツを持ちながら、男前なギタープレイが印象的な魚住と、典型的なハードロック指向の宮澤の滑らかなフィンガリングが織りなす実力派の2本のギター。
2013年3月のステージデビューより、精力的なライブ活動を通し、バンドとして、そしてギタリストとして、元・モーニング娘。田中れいなに決して引けを取らない存在感を放っている。現在のシーンにおいて、ここまでハードロック様式美ツインギターというのも珍しく、総勢4000人からのオーディションで選ばれた定評のあるテクニックは、華のある雰囲気とともに新世代のギター・ヒロイン像を期待させる二人である。
心地よすぎるオルタナ・ギター 橋本絵莉子(チャットモンチー)
二人編成になり、各楽器の持ち回りやサンプリング・ループを駆使した型にはまらない演奏形態で、その発想力と類い稀なる才能を開花させた。だが、チャットモンチーと言えば、最小編成のボーカル+ギターバンドとしての理想形とも言えるトリオ時代の飾らないギターが印象的である。
派手さや特筆するようなテクニックがあるわけでもない。弾き語りに近い、シンプルな歌の伴奏である。だがそれはリズムや譜割りといった表面上収まることのない、歌と感情に合わせたエモーショナルな人間味溢れるもの。歪み過ぎず、適度に荒々しい極上のテレキャスタートーンは印象的な歌声と相まって、何より聴いていて心地よさを感じるのだ。