欅坂46が“渋谷”に刻み込んだ始まりと終わりの記憶 国立代々木競技場第一体育館ラストライブに向けて
渋谷PARCOにも欅坂46の歴史は刻み込まれている。2016年8月7日に再開発のため閉館となった渋谷PARCO。その3日後の8月10日にリリースとなった2ndシングル『世界には愛しかない』には平手友梨奈のソロ曲「渋谷からPARCOが消えた日」が収録されている。MVには旧渋谷PARCOのネオンサインをバックにした平手の姿。同年の夏、渋谷PARCOの屋上ではメンバー全員による撮影が行われており、その写真が2020年夏、ドキュメンタリー映画公開を記念し、新たな渋谷PARCOで開かれた「Gallery of 欅坂46 @SHIBUYA PARCO ROOFTOPPARK」で使用された。ちなみに、渋谷PARCOからほど近く、渋谷センター街の渋谷 CLUB QUATTROが入ったビルとMEGAドン・キホーテ渋谷本店の間は、欅坂46ファースト写真集『21人の未完成』で平手のカットが撮られた場所でもある。
ドキュメンタリー映画『僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of 欅坂46』は、メンバーへのインタビューと過去5年間の映像をもとにグループの歴史を紐解いていく作品。そのインタビューは渋谷各所にて行われている。最も分かりやすいのは、渋谷川での小林へのインタビュー。さらに渋谷の全景をバックにした菅井へのインタビューから、ラストは渋谷PARCO屋上に立つ菅井を起点に渋谷の街並みを空撮した映像で映画は幕を閉じる。まさに、欅坂46と渋谷の5年間の歴史を象徴した一つと言えよう。
9月20日、櫻坂46への改名がサプライズ発表されたのが渋谷駅前の街頭ビジョン。新たなグループ名・櫻坂46は六本木のけやき坂に隣接するさくら坂からの由来であるが、「サイレントマジョリティー」のラストで21人が横一列に並ぶ坂もまた、渋谷の“さくら通り”と呼ばれる場所だ。
そして、10月12、13日に欅坂46は国立代々木競技場第一体育館に立つ。「サイレントマジョリティー」の前日譚とされている「月曜日の朝、スカートを切られた」のラストは、代々木競技場に向かうシーンであった。欅坂46の歴史に幕を閉じ、新たな一歩を踏み出す場所として、代々木競技場はグループにとって最後まで残されていた渋谷にある近くて遠い、彼の地だったのかもしれない。
欅坂46が櫻坂46に生まれ変わるように、渋谷もまた再開発が進み大きく発展を遂げている。しかし、欅坂46が渋谷と共に刻んだ歴史と思い出の記憶は、これからもファンの間で語り継がれていくことだろう。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter