嵐、新曲「Whenever You Call」で与えた2つの衝撃 ブルーノ・マーズの手腕から歌詞に綴られたメッセージまでを聴き解く

 9月18日、嵐の新曲「Whenever You Call」がダウンロード/ストリーミングサービスで配信リリース、同日にはYouTubeなどでMVも公開された。昨年の「Turning Up」を皮切りにデジタル配信サービスへの取り組みを開始し、リリースされる作品についてもこれまで以上の音楽的な挑戦が目立つようになった嵐だが、「Whenever You Call」はその中でもさらに強いインパクトを与える楽曲となっている。

ARASHI – Whenever You Call [Official Music Video]

 まず、これまで配信曲を担当してきたのは海外のヒットアーティストを多数手掛ける有名プロデューサーたちだ。これまでも「IN THE SUMMER」でラミ・ヤコブと組んだり、「Turning Up (R3HAB Remix)」ではR3HABがリミックスを手掛けるといった試みはあったが、今回プロデュースを担当するのは、なんとあの世界的なアーティスト、ブルーノ・マーズである。

 ブルーノといえば、2010年にアーティストデビューして以来、R&Bをルーツとする卓越したソングライティングと、滑らかな色気とファンキーさを兼ね備えたボーカル、そしてエンターテインメント精神に溢れたパフォーマンススキルを武器に「Just The Way You Are」(2010年)や『That’s What I Like』(2016年)など大ヒット曲を連発し、2014年と2016年には“トップアーティストのみが立つことを許される聖域”とされるアメリカのスーパーボウルでもパフォーマンスを披露(2016年はコールドプレイ、ビヨンセと出演)、文句なしに世界的アーティストとなる。そのブルーノが、なんと楽曲提供だけではなく、プロデュース、ボーカルディレクションと全面バックアップ体制で「Whenever You Call」に参加しているのだ。確かに裏方として様々なヒット曲に関わってきた著名プロデューサーでもあるブルーノだが、それ以上にアーティストとして絶大な知名度を誇るため、そのインパクトは相当なものだった。

Bruno Mars – That’s What I Like (Official Video)

 さらにインパクトのある要素として、「Whenever You Call」は全編英語詞の楽曲となっている。これまで、“Rebornシリーズ”や「IN THE SUMMER」などで多くの英語詞が導入されることはあったが、嵐のシングル群におけるオリジナル楽曲として、歌詞全てが英語というのは今回が初の試みとなる。先日の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でのパフォーマンスの際もテロップに和訳が表示されることはなく、あくまで本楽曲のメッセージは“英語のみ”で届けられているのである。

 “数々の世界的ヒットを手掛けるブルーノ・マーズによる楽曲提供”、“全編英語詞のシングル曲”と、2つの大きなトピックを持つ「Whenever You Call」だが、実はここまで書いてきたこれらの試みは、何も今回が完全に初めて、というわけではない。転機となった「Turning Up」以降の楽曲群において、様々な形で「Whenever You Call」に至るまでの布石を確認することができるのである。むしろ、これまでの挑戦の数々を経て、今回の楽曲にたどり着いたと言ってもいいだろう。

 また、これらの試みはある1つの目的へと向かっている。それは“これまで嵐を応援してくれた世界中のファンへの感謝”だ。そう、「Whenever You Call」はこの一年の嵐の音楽的挑戦の集大成であり、満を持して届けられる嵐からのメッセージなのである。

嵐のチャレンジとプロデューサーの手腕

 「Whenever You Call」を聴いてまず驚かされるのは、英語詞を歌う嵐メンバーの表現力である。元々、どのメンバーも素晴らしいボーカリストではあるが、本楽曲に関しては“最初の壁”である英語詞での発音をクリアし、その上で細部の音ひとつひとつを的確に捉え、丁寧かつ滑らかに言葉をなぞり、揺れの部分もコントロールしながらしっかりと感情を込めており、どの瞬間も心を動かされる。特にタイトルでもある〈Whenever you call〉と歌う部分は、力強く、それでいて儚く消えていく歌声が魅力的だ。個人的には、嵐の楽曲の魅力の1つとして、それぞれのメンバーの声が重なる瞬間に強く惹かれるのだが、本楽曲ではそういったハーモニーの美しさが存分に発揮されており、これ以上ないほど嵐のボーカルの素晴らしさを堪能することができる。

 もちろん、歌の部分においては、ブルーノ・マーズ自らが5人のボーカルディレクションを担当したという背景も大きいだろう。だが、それ以上にこれまで“Rebornシリーズ”を中心に取り組んできた英語詞への挑戦が実を結んだ結果とも言えるのではないだろうか。特に「Face Down : Reborn」では、レディー・ガガやジャスティン・ビーバーといった世界的アーティストのプロデューサーであるBloodPop®︎が原曲の再構築を担当。原曲の歌詞を一新した英語詞では「鍵のかかった部屋に閉じこもってしまったファンへ手を差し伸べる」というシリアスなメッセージを伝える内容となっていたが、嵐のメンバーはこれを見事に歌い上げていた(関連記事)。英語詞に加え、J-POPとは毛色の異なるトラックでもあり、ある意味では最も大胆な試みだった本楽曲だが、この時の挑戦が間違いなく「Whenever You Call」に活かされていると言える。

ARASHI – Face Down : Reborn [Official Lyric Video]

 そして、楽曲の構成も見事だ。特にイントロの印象的なシンセサイザーのループに、徐々にコーラスが重なり、期待が頂点に達したタイミングで鳴り響く一発の力強いビート。それを皮切りに大野智が優しく語りかけ、目の前の景色が一気に開けていく。もしかしたら、ブルーノの代表曲「24K Magic」のように、嵐にフィットするようなファンキーで楽しい楽曲に仕上げることもできたかもしれない。しかし今回のコラボレーションにあたって、ブルーノはあえて“正面勝負”とも言える、自身にとって最大の得意分野であるR&Bを基調としたサウンドに仕上げており、だからこそ嵐の歌声の魅力を最大限に引き出すことに成功している。

 この楽曲制作において、実は今回参加しているのはブルーノ・マーズだけではない。もう1人、D’MileことDernst Emile IIもプロデューサーとして共同参加しているのだ。実はこのD’Mile、かつてジャネット・ジャクソン『Discipline』や、Jay-Zとビヨンセによるプロジェクト・The Cartersの『Everything Is Love』、最近ではH.E.R.『I Used To Know Her』に参加。グラミー賞の常連でもあり、R&Bにおける重要なプロデューサーなのである。そんな彼のこれまでの楽曲を振り返ってみると、ボーカルをより魅力的に聴かせるため、メロディに合わせて楽器や歌声などでコードやハーモニーを効果的に重ねていることがわかる。「Whenever You Call」において非常に印象的なコーラスワークも、ブルーノだけではなく、D’Mileの手によって構築された可能性も高い。「Whenever You Call」でD’Mileに魅力を感じたという人は、ぜひ彼の過去のワークスにも触れてみて欲しい。きっと、「Whenever You Call」を様々な角度から楽しむことができるはずだ。

D’Mile breaks down the vocal arrangements & beat for Ty Dolla $ign’s “Miracle” off Free TC

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