UNISON SQUARE GARDENはバラードも名曲揃い サブスク解禁を機に紐解くバンドの姿勢

 UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)が、メジャーデビュー以降にリリースしたフルアルバム7作を各サブスクリプションサービスにて解禁した。これまでCDにしか収められていなかった楽曲も手軽に聴けるようになり、アルバムという形態にこだわってきた彼らの珠玉の作品群に新たに出会うリスナーも多いはず。本稿では、スローテンポでメロディアスなバラードソングを軸に、ユニゾンのアルバムとバンドの姿勢を紐解いていきたい。

 メジャー1stアルバム『UNISON SQUARE GARDEN』は、原点にしてすでに怒涛のロックサウンドを土台とした躍動的なポップソングを確立しており、11年前の作品でありながら収録曲は今なおセットリストに入り続けている。そんなアルバムの最後を飾る「クローバー」は流麗なアルペジオと穏やかなドラムロールが夢心地を誘う美しいバラードだ。

「クローバー」

 直接的な説明はなく、抽象的な情景や心象描写で綴られる、初期のユニゾンに多く見られた歌詞世界はこの曲にも健在だ。それらをじっくりと読み進めていくのが田淵智也(Ba)の書く歌詞の楽しみ方の1つだろう。この曲には、全編通して無垢なものを慈しむフィーリングが漂っていることが分かる。自分たちの放つ誇り高き音楽が“変わらない”ことへの強い祈りと、これまでのあらゆるシーンが〈未来のパズルに続いてる〉というこれからへの期待が綯い交ぜになった、メジャーデビューの門出に相応しい1曲だ。

 その後、苦戦の季節を経て、2011年「オリオンをなぞる」を契機に鍵盤や管弦編曲を取り入れ始めると風向きが変わった。そのアプローチの結晶となった2013年の4thアルバム『CIDER ROAD』には、ポップサイドに振り切ったユニゾンの楽曲たちが詰まっている。

「君はともだち」

 そのラスト前に配置された「君はともだち」はピアノとストリングスの音色がフィーチャーされたバラードだ。6分を超える長い演奏時間でじっくりと、シンプルな言葉選びが為されるこのアルバムでは異端な1曲。ここに刻まれた大切な人に向けた親愛の情を“名前”というアイテムを用いて描き出してある。歌詞中の“君”はファンのメタファー……なんて分かりやすいことはきっとないだろうが、そんなことも思わせてくれる温かさに満ちている。オーセンティックなポップスをユニゾン流にやるとどうなるか、そんなトライアルに挑んでいた時期だからこそ生まれた名曲だ。

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