DAOKO×米津玄師、神前暁、広瀬すず……映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』音楽面の魅力を考察
広瀬すずが歌う挿入歌にも注目
広瀬すずが声を演じるヒロイン・及川なずなが劇中で歌う松田聖子「瑠璃色の地球」のカバーも要注目だろう。それは、歌手活動を行っていない広瀬のレコーディングされた歌声を聴けるレアケースだからだ。3年を経た現在においても、ここまでがっつり広瀬のボーカルを楽しめる楽曲は、おそらく「一度死んでみた」(主演映画『一度死んでみた』挿入歌。ヒャダイン作)程度で、しかもこちらは音源リリースすらされていない。
広瀬による「瑠璃色の地球」のカバーは、ピアノ主体のバンドサウンドと管弦楽によるゴージャスかつクラシカルなアレンジに乗せて、役柄を反映したイノセントで素朴な味わいのボーカルを堪能できる。本編中でもかなり異質な、印象に残りやすいシーンで使われているのも注目だ。
DAOKOが歌う挿入歌「Forever Friends」も、劇中での使われ方が非常に印象的な1曲。アコースティックギターのアルペジオと管弦をフィーチャーしたソフトロック寄りのフォークソングといった印象のバラードで、1993年の原作ドラマで主題歌として使用されていたREMEDIOS(麗美)のカバーとなっている。DAOKO特有の低体温なウィスパーボイスと、技巧的ながら淡々としたメロディラインが、逆に映画のエモーショナルさを増幅させていく妙味を味わうことができるはずだ。
映画鑑賞においては、何も考えずに感覚だけで楽しむのがおそらく最も正しい作法だろう。しかし、もし余力があれば「音楽が作品にどのような作用を及ぼしているのか」に思いをはせつつ観ることも、ぜひ試してもらえたら幸いだ。
■ナカニシキュウ
ライター/カメラマン/ギタリスト/作曲家。2007年よりポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」でデザイナー兼カメラマンとして約10年間勤務したのち、フリーランスに。座右の銘は「そのうちなんとかなるだろう」。