ジャニーズWESTの魅力はユーモアにとどまらない 直近のリリース作に表れた音楽的ポテンシャルを裏付ける“証拠”
ジャニーズWESTの人気が上昇してきている。最新シングル『証拠』の初週売上が20万枚を超え、この売上枚数の記録はデビューシングル『ええじゃないか』以来2作目となる。3月に発売したアルバム『W trouble』も初週で20.8万枚売り上げ、自己最高アルバム売上枚数を更新している。前作『WESTV!』は初週10.5万枚の売上だったので、売上枚数は約2倍に伸びたことになる。
人気の上昇はバラエティでの活躍が影響しているかもしれない。若手芸人にも負けないほど笑いに貪欲で爪痕を残そうとする。トーク力も高くしっかりと組み立てられた内容を話すことができる。彼らの人間力に惹かれてファンになった人もたくさんいるはずだ。しかしバラエティで人気になったからとCD売上が上昇するとは限らない。音楽として魅力がなければCDまで手を出そうとはしないはずだ。
3月にリリースされた最新アルバム『W trouble』は幅広い音楽ジャンルを網羅している音楽的に攻めたアルバムだった。「ホメチギリスト」のようにグループのイメージにベストマッチしたユーモア溢れた明るい曲や、ONE OK ROCKのサウンドプロデュースを長年務めていたakkin編曲の「Survival」のようなロックナンバーもある。他のジャニーズグループと比べても幅広いジャンルに挑戦している。
自身がアーティストとして活躍している楽曲提供者も多い。シングル曲「プリンシパルの君へ」はHoneyWorksが楽曲提供を行っているし、最新アルバムではケツメイシのRYOJI、GReeeeNのプロデューサー・JINなど多くの人気アーティストが楽曲提供を行っている。そんな楽曲提供陣は個性が強い。しかし全てジャニーズWESTの個性を加え、ジャニーズWESTが歌うべき楽曲に昇華している。
特にゴスペラーズの黒沢薫が作詞作曲に関わった「Special Love」を聴けばメンバーの個性と歌唱力の高さを実感するはずだ。全員が感情豊かで高い表現力がある。声量もあり高いキーもしっかり声が出ている。それでいて全員の歌声が揃った時、より魅力を増大させるのだ。主旋律に低音、高音と分かれて歌い綺麗にハモる。ただユニゾンで歌っているわけではない。全員に表現力と技術力があり、歌唱にこだわっているからこそ美しいハーモニーを響かせることができている。
ジャニーズWESTといえば「ええじゃないか」や「ズンドコパラダイス」、「おーさか☆愛・EYE・哀」のようなユーモアに溢れた楽曲を思い浮かべる人が多いかと思う。シングル曲では彼らのテレビで見せる明るく元気なイメージに合わせた楽曲が多く、アルバムを聴かなければ音楽性の幅広さや技術力の高さは伝わりづらかった。しかし新曲「証拠」は彼らの凄さがしっかりと伝わるシングル曲のように思う。
「証拠」は疾走感溢れるバンドサウンドが印象的な演奏。サビの前向きな歌詞のメッセージはメンバーの力強い歌声と相性が良く、真っ直ぐ胸に響く。シンプルなロックナンバーにも感じるが、よくよく聴くとAメロでは音数が少なくなったりリズムが変化したりと複雑さがある。そんなAメロでは繊細な歌声を披露して演奏を引っ張っている。大サビでバトンを繋ぐようにソロの歌唱を畳み掛けて繋いでいく展開も素晴らしい。彼らの歌唱によって楽曲が盛り上がり圧倒させられる。複雑で凝っているのにシンプルに感じて素直に感動してしまう。それは複雑な曲も難なく歌いこなしてしまうジャニーズWESTの凄さが理由だ。