KREVA、“新たなライブ様式”に向けた粋な試みの数々 ストリーミングライブ『①(マルイチ)』レポート
後半も「瞬間speechless」でフロアからバーカウンターに移動して歌ったり、「EGAO」で客席のテーブルに置かれたMIDI Fighterを演奏しながら歌ったり、KREVAはBillboard Live TOKYOのスペースをフルに活用したパフォーマンスを繰り広げていく。
終盤には、この6月24日にリリースされた新曲「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」も披露した。KREVAはMCで「メンバーが持ってるビンテージ楽器にインスパイアされてこの曲を作った」と歳を重ねることをポジティブに捉える曲を作ったきっかけを語り、ギターやベースやシンバル、ウーリッツァーなどメンバーたちが所有するビンテージ楽器を紹介する。そのふくよかな音色を奏でてから、SONOMIをフロアに招いて並んで座りこの曲を歌う。そして、新曲のもうひとつのきっかけが「SONOMIと歌う“声が一つになる感じ”をもう一度やりたいと思った」ことだと語り、やはりSONOMIと自然体の歌声を重ねる「涙止まれよ feat. SONOMI」を続ける。
ラストは「音色 〜2019 Ver.〜」。「俺がドクターK、これがマルイチ!」とKREVAが高らかに告げ、全曲が終了。メンバー紹介を終えると先日6月18日に誕生日を迎えたばかりのKREVAにサプライズでケーキが振る舞われ、晴れやかなムードのなか終演となった。
こうしてライブが終了したのだが、サプライズはそれだけではなかった。KREVAとバンドメンバーがステージを降りると、フロアには食事とシャンパンが用意され、そのまま乾杯して打ち上げへ。どうやらKREVAのライブ後の打ち上げは終わったばかりのライブの映像をスタッフとメンバー全員で観ながら歓談するのが通例とのことだが、それをファンと共に行うという粋な試みだ。
結果、リラックスしたムードで繰り広げられた“打ち上げ配信”も1時間以上たっぷり行われ、肩の力が抜けたムードでライブの裏側を垣間見せる貴重な場となっていた。
「配信ライブの正解って、まだ誰も見えてないじゃないですか」とKREVAも語っていたが、おそらく様々なアーティストがオンラインならではの演出を模索している時期である今。ストリーミングライブ『①(マルイチ)』は、“新たなライブ様式”への一つのヒントになったと言えるかもしれない。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter