内村イタル率いるゆうらん船が示す“僕らの世代”ーーアカデミズムとインディロックの融合が進む2020年代の潮流

 もう一人、名前を挙げておきたいのが、ベースを担当するGateballersの本村拓磨。彼は内村が2016年にスプリットを発表しているカネコアヤノのバンドメンバーでもあり、KID FRESINOの話題作「Cats & Dogs (feat.カネコアヤノ)」にもKID FRESINOのバンドメンバーに混ざる形で参加しているが、現在Gateballersは彼らの周辺でハブのような役割を果たしている。

KID FRESINO - Cats & Dogs feat. カネコアヤノ (Official Music Video)

 実際、ボーカル/ギターの濱野夏椰は踊ってばかりの国の下津光史らとのGODでも活動し、昨年は小山田壮平のバンドツアーにも参加。ドラムの久富奈良も同じく小山田のバンドに参加し、彼が所属するもうひとつのバンドであるナツノムジナには、サポートとして伊藤が参加。そして、内村自身がGateballersのサポートメンバーでもあり、もっと言えば、カネコのバンドのギタリストは、元・踊ってばかりの国の林宏敏だ。砂井が参加しているWanna-Gonnaやフレディーマーズも含め、ここにはUSインディ譲りの「サイケ」や「フォーク」をキーワードとしたコレクティブが生まれていて、ゆうらん船はGateballersと並び、その中核に位置するバンドだと言っていいだろう。

Gateballers 配信ワンマンライブ@下北沢BASEMENTBAR / オンラインやついフェス編集版

 日本語ポップスへの憧憬、USインディへの愛情、R&Bやヒップホップとの同時代性、クラシック/現代音楽との邂逅。こうした2010年代の潮流を受け取り、様々な縁で同じ船に乗り合わせた音楽家たちがそこに新たな解釈を施して、「これが僕らの世代だ」と提示する『MY GENERATION』。2020年代の幕開けを飾るに相応しい作品である。

ゆうらん船『MY GENERATION』

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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