山口百恵の楽曲が持つ“褪せることのない一瞬の輝き” 時代性を捉えたサウンドと芯の通った歌声の魅力

山口百恵『GOLDEN☆BEST 山口百恵 コンプリート・シングルコレクション』

 1980年に行われた東京・日本武道館での引退コンサートから40年。世代や性別を越えた多くのファンの声に応え、伝説の歌姫・山口百恵の珠玉の楽曲たちがサブスクで解禁された。1973年のデビューシングル曲「としごろ」を始め、「ひと夏の経験」「プレイバック part 2」「いい日旅立ち」「秋桜」「さよならの向う側」といった代表曲から、ラストシングルとなった『一恵』までの全シングルのほか、22枚のアルバムと6枚のライブアルバム、女優として出演した作品のサウンドトラックアルバム8作を加えた600曲以上が一斉配信となった。

テクノ、フュージョン、ロック……時代性を反映させる表現力はまるでカメレオン

 山口百恵は、オーディション番組『スター誕生!』(1971年〜1983年)を経て、14歳のときに「としごろ」でデビュー。当初は作詞・千家和也、作曲・都倉俊一のコンビによる「青い果実」「禁じられた遊び」「ひと夏の経験」など、清純さをたたえた少女が歌う大胆な歌詞が話題を呼んだ。転機になったのは1976年の楽曲「横須賀ストーリー」で、この曲以降、作詞・阿木燿子、作曲・宇崎竜童のコンビで「イミテイション・ゴールド」「プレイバック part 2」「絶対絶命」「ロックンロール・ウィドゥ」など、数々のヒット曲を生み出していく。阿木・宇崎コンビによるロック調の楽曲はどれも当時の歌謡界には画期的なもので、たとえば「美・サイレント」の歌詞に空白箇所を設けるギミックなどは毎回話題を呼んだ。豊かな発想力を持つ阿木&宇崎との出会いが、、山口百恵に自由に羽ばたく翼を与えたとも言えるだろう。以降のアルバムや作品では、実にさまざまなトライアルを繰り返している。

 山口百恵は、引退する1980年11月までに32枚のシングルと22枚のアルバムをリリース。平均すると1年にシングル4枚、アルバム3枚という驚異的なハイペースだ。シングル曲のインパクトゆえ、アルバム単位で語られることは少ないが、サブスク解禁を機にアルバムを聴いていくとコンセプチュアルなものも多く、作品ごとにまるでカメレオンのごとく違った表情を見せていることに驚く。

 たとえば1977年のアルバム『GOLDEN FLIGHT』は、ロックンロールがテーマ。本作は初の海外録音作品で、ロンドンでレコーディングしたという。ミュージシャンからエンジニアまで現地のアーティストを採用し、元King Crimsonのゴードン・ハスケルも参加した。爽快なブラスサウンドを取り入れた「Made in U.F.O.」で幕を開け、ファンクやレゲエなどの要素を取り入れた楽曲も収められている。同アルバムに収録の「IMITATION GOLD」は、シングルバージョンの「イミテイション・ゴールド」に比べ、ロックで大胆なリアレンジが施されており、より聴き応えのある仕上がりとなっている。

『GOLDEN FLIGHT』

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